新たなリアリズムへ。

4戦連続で,無失点ゲームを継続している。


 となると,2006シーズンのように現実主義的な戦術へと回帰したのか,と考えたくなるところですが,構成要素として2006シーズンのスタイルが残っているとしても,昨季表現していたフットボール・スタイルそのものを2007シーズンへと持ち越している,というのはちょっと違うようにも感じます。


 個人的な推理ですが,ボール奪取位置を90分という時間枠の中で積極的に上下動させよう,というのが基本的なアイディアではないか,と思うのです。


 できるだけ早い時間帯で,主導権を掌握すること。また,相手の仕掛けを受け止めてから仕掛けるのではなく,立ち上がりから積極的に仕掛けていくこと。そのために,前半ではボール奪取位置を比較的高めに設定し,プレッシングも最終ラインへとボール(ボール・ホルダー)を追い込んでいくようなスタイルではなく,ファースト・ディフェンスから積極的にボール奪取までを視野に収めたスタイルを指向するようになっている。ある意味では,徹底したプレッシングからハーフコート・カウンターを仕掛けていた2004シーズンのスタイルに(部分的に,ではあるけれど)回帰しているような感じがします。


 ただ,ハーフコート・カウンターだけを主戦兵器とすると,フィジカルという部分でリスクを抱えることになります。「飛ばしすぎ」によってチームが間延びを起こしてしまい,相手にスペースを与えてしまうことになる。つまり,守備バランスという部分で最終ラインに掛かる負荷が高まってしまうことになります。


 このような状況を回避するために,「緩やかに」2006シーズン的なフットボールへとシフトさせていく,という戦術的なピクチャーを同時に要求しているような感じがするわけです。それだけに,チームのコンパクトさを維持するには,前線も上下動を要求されることになるはずですが,同時に最終ラインもオフサイド・トラップを仕掛ける,という意味ではないにせよ,ライン・コントロールを要求されることになるはずです。


 機能美を感じさせるフットボールと,現実主義に貫かれたフットボールを同居させる。


 指揮官の要求は恐らく,このあたりにあるのではないか,と感じますが,まだこの2つのバランスがまだ最適値にまでは到達していない,ということなのでしょう。


 あるいは,積極的に仕掛けるべきタイミングと,相手の攻撃を受け止めながら仕掛けていくという姿勢を見せるべきタイミングとが,あまりにハッキリと分かれすぎている,と言いますか。


 ここ数節の戦い方を考えてみると,前半45分はプレッシング・フットボールを押し出す一方で,後半45分は基本的に,最終ラインで相手の攻撃を受け止めるところから攻撃を仕掛けはじめる,リトリート的なフットボールを意識しているように思えるのですが,後半立ち上がりの段階では,チーム全体が巧くリトリートへと切り替えられず,結果としてコンパクトさを失ってしまっているような感じもします。加えて言えば,後半にあってもプレッシングからハーフコート・カウンターを仕掛ける姿勢を見せ,攻撃がスムーズに展開されている時間帯があったようにも思います。前後半で大ざっぱにリズムを切り替えるのではなく,ゲームの流れによってリズムが変化させられるようになると,浦和が見せる「強さ」は一段高いところへと進めるのではないか。そんな感じもします。


 恐らく,今季浦和が指向するフットボール・スタイルは,欧州クラブが中野田のピッチで表現したことと相似形を描くのではないか。そんな期待もあったりするのです。