対神戸戦(07−16)。

今季は,「時間帯限定」という留保文言を使わざるを得ないゲームが多いわけですが。


 その時間が間違いなく長くなっているな,と感じますね。


 とは言え,2007スペックの慣らしが済んだ,という段階でもあるでしょう。ポテンシャルを思えば,まだまだこんなものではない。


 神戸戦であります。


 今節は,使い慣れたパッケージでありました。ごくシンプルな,3−5−2システムであります。


 どうしても,昨季の印象を基準にしてしまうと「安定性」という部分を意識してしまいますが,実際に駒場で展開されていたフットボールを考えると,少しだけチームのバランスを2004シーズン方向へと傾けたスタイルを意識しているのではないか,と感じます。


 もちろん,守備ブロックが仕掛けた網へと追い込んでいく,というリトリート指向のプレッシング・スタイルは維持されているし,最終ラインが構えているポジションにしても,オフサイド・トラップを積極的に仕掛けていくような高さを常に維持しているわけではなく,むしろ低めに構えている時間帯が多いのは確かです。ですが,前線から積極的なチェイシングを仕掛けられるようになっていることで,最終ラインがラインを押し上げられる時間帯が増えてきている。そのために,チーム全体がコンパクトさを維持できるようになり,中盤がボール奪取までを意識したプレッシングを仕掛けられる局面が増えてきています。それゆえ,攻撃の起点が最終ラインだけでなく,ディフェンシブ・ハーフのポジションあたりにまで上がっていくことで,攻撃をシンプルに仕掛けられるようになっている。ポゼッションを背景とする遅攻だけではなく,浦和のDNAとも言うべき「縦への鋭さを主戦兵器とする速攻」,つまりはカウンター・アタックが有効に仕掛けられるようになってきているように感じるわけです。


 また,ボールを大きく展開することができていることで,相手守備ブロックを自陣深い位置に押し込めるだけでなく,横方向へも引き延ばすことができていた。「仕掛け」の安定性は,前節・FC東京戦以上に明確な形を持ってきたな,と感じるところです。


 それだけに,最終的な部分でもったいなさを感じることが残念だったかな,と思うわけです。


 特に前半の早い時間帯ですが,攻撃的な部分でリズムを掌握してはいるものの,決定的な局面をモノにできない,というのはゲームを早い段階で決定付けるという部分を考えても,ちょっともったいなかったな,と思うわけです。また,流れの中からフィニッシュへ,という部分でもうちょっと熟成に時間がかかるかな,と思いますね。ちょっと,パサーの見えている視界と,レシーバの意識とにズレが感じられる局面がある。


 あとは,後半の戦い方になるでしょうか。


 2点のアドバンテージを築いている。それは確かなのですが,“スローダウン”をするにしても,主導権を譲り渡さない形でのスローダウンを意識してもいいかな,と思うところです。


 浦和が指向するフットボール・スタイルを積極的に表現することで,主導権を掌握していたのが前半だとすれば,そのスタイルが相対的に影を潜め,「結果として」主導権を相手に渡しかねなかったのが後半だったように思います。リトリートを基盤とするにしても,中盤でのプレッシングがまったく必要になるわけではない。中盤で追い込みながら最終ラインが仕掛けた網にかける,という意識が徹底されていないと,チームの重心を自陣深い位置に設定することになる。それは,不必要なリスクを抱え込むことにもなりかねない。


 チームが,ポジティブなイメージを共有できるようになっているタイミングだからこそ,イメージのすり合わせをシッカリとしていけば,さらに2007スペックは明確な形を見せてくれるのではないか,と感じます。