24 Heures du Mans 2007.
“パッケージ”として強い,というのはこういうことか,と。
当然,ファクトリー・チームとして機能しているわけですから,開発中枢として機能するはずのアウディ・スポールも強力でしょう。レーシングの世界では,少なくとも2006シーズンは未知数であったディーゼルを短期間で熟成させ,2季連続でポディウムの真ん中に導いたのですから。
それだけでなく。「実戦部隊」がしっかりしているということも意識しておくべきでしょう。
ドライヴァにしても,ツーリングカー・レースなどを通じてアウディとの関係が深いフランク・ビエラやトム・クリステンセン,アラン・マクニッシュなどなかなかに強力なラインアップを敷いている。チーム・マネージメントを含めて,「勝ちに行く」体制だな,と感じます。
ル・マン24時間,であります。
プジョー・スポールも908という強力なレーシング・ディーゼルを仕立て,総合優勝は恐らく,アウディとプジョーで争われるのではないか,という下馬評がありましたが,結果的には,アウディがプジョーを退ける,という形になっています。
さて,優勝を果たした“アウディ・スポーツ・ノース・アメリカ”というチームでありますが。
ちょっと言い方を換えると,「アウディ・ワークス」であります。ドイツが本拠地なのに,なぜに北米?でありますが,北米で開催されている“ALMS”(アメリカン・ル・マン・シリーズ)というシリーズに,ル・マン連覇を果たしたR10を熟成させるために参戦している,というわけなのです。
そして,強力なパートナーシップを組んでいるのが,“チーム・ヨースト”です。
ポルシェの黄金時代を支えた最強のレーシング・チームであり,“プライベティア”と言うよりは“レーシング・コンサルタント”とでも表現したくなる技術屋集団です。R10やR8を開発するにあたって,アウディは技術的なアドバイスをヨーストに求め,実際にレースにあってはピットワークなどを担当する。北米アウディ・スポーツにも,当然チーム・ヨーストの技術的なノウハウは生かされているはずです。
今季のル・マンは悪天候に見舞われ,アウディもアクシデントでヨーストが直接オペレートしているマシンと,北米アウディがコントロールしているマシンの,計2台を失っているわけですが,それでもプジョーの挑戦を退けています。
プジョー・スポールは完全なるファクトリー・チームですし,そのパワーはダカールやWRCなどでも実感するところですが,さすがにデビュー・ウィンを飾るにはアウディが持っている総合力,その総合力が作り出す壁が高かった,ということでしょうか。
いずれにせよ。ル・マンでは「勝負権」を得るためにはレーシング・ディーゼルを持ち込むことが前提条件になりつつあります。この技術的なチャレンジに,国産メイクスが追随するか,それとも独自のアプローチでディーゼルを打倒すべくプランを立てるか。そんな野心を持ったメイクスが出てきてほしい,と思うのであります。