Hybrid.

・・・真保裕一さんの小説。


 ホワイトアウト”。


 この題名のもとになったのは,確か猛烈な吹雪によって視界を奪われ,位置関係が把握できなくなってしまうことを指すと記憶しておりますが。エラーで,ページが見つからない,なんてのも付け加えていただきたいものであります。


 というようなことを言っている場合ではなくてですね。


 最近は安定したパフォーマンスを発揮してくれている大家なんですが,時に予想外の絶不調に陥ったりするものだから質が悪い。大家に成り代わりまして,お詫び申し上げます。


 さて,FC東京戦関係で本題です。


 ちょっと俯瞰的にゲームを見ることのできる位置から,チームを見ていてふと頭に浮かんだ単語が,“Hybrid”というものだったわけです。


 まず,キックオフを待つチームの布陣です。どこからどう見ても,4−4−2ボックスでありました。


 闘莉王選手と坪井選手がCBとして構え,山田選手が右サイドのSB。で,“ハイブリッド”の肝になるのが,左サイドであったような。クレジットでは,相馬選手をDF登録としているわけですが,実質的にはウィンガーのような位置取りをしていて,逆にMF登録となっている阿部選手がSBのポジションに入っている時間帯が非常に長かったわけです。


 のみならず,3バックと4バックを巧く使い分けながら守備応対をしていた。


 アウトサイドからの攻撃をケアする場合には,サイドにフタをするべく守備的な形での4バックを作り出す一方で,センターへの応対を安定させる必要がある局面では,間違いなくやり慣れているだろう3バックのストッパーとして,阿部選手を使っていたわけです。


 2006シーズンにあっては,最終ラインは固定された”ユニット”として意識されていて,そのユニットにどれだけしっかりとボールを追い込んでいくか,という部分が中盤には求められていたように思うのですが,今季はかなり複雑なタスクをこなすことが求められているようです。


 3の強みを生かしながら,同時に4が必要な局面では4をも使う。大ざっぱにチームの機能を守備面と攻撃面とに分けるならば,守備面での2007スペックはちょっとだけ早く,熟成しはじめたかな,と感じます。


 そしてもうひとつ。攻撃面でも複合的な要素を感じることができたように思うのです。


 言うまでもなく,達也選手の復帰です。もちろん,実戦復帰したばかりの段階ですから,多くを期待するべきではない,とも感じますし,イビツァさんも指摘するように「薬は時間」だろうと思います。しかし,達也選手の復帰で,浦和のスタイルに「継続性」を強く感じられるようになったことも,また確かであるように思います。“カウンター・アタック”です。


 縦への鋭さを持ち,スペースに対する嗅覚を持った選手が戦列復帰したことで,チームがスペースを意識できるようになってきた。そして,達也選手のスタイルはどこか,彼のかつてのチーム・メイトに似てきているようにも感じます。ボールを収めてからの加速力,ドリブルからシュート・モーションに入るタイミング。一時期,相当ワンタッチ・プレーを強く意識していた時期があるように記憶していますが,そのタイミングを微妙にずらしながらシュート・モーションに入るようになると,本格的に似てくるかな,なんて感じます。


 2004シーズン後期のスタイルから,緩やかに変化を遂げながら2006シーズンの安定感を獲得した。その安定感からさらなる高みを目指すために,再びコンパクトな陣形から攻撃を仕掛けるスタイルをエッセンスとして加えていく。いままでとは逆の方向性でのハイブリッド・フットボール。振り子を再び動かす,という表現がいいのかも知れませんが,そんな時期にきているのかも知れない,と思うのです。