対FC東京戦(07−15A)。

やっと,2007スペックのファースト・プロトタイプを組める段階なのかも知れません。


 本来,1トップを採用していたことにしても,トップとの「適切な距離感」であったり,トップがボールを保持しているタイミングで生じるスペースを狙った動きを意図してのことだったのでしょう。ある意味,戦術的な面でのブレはない。ただ,その戦術的な要素をチームに落とし込むにあたって整理が不十分だったのか,必ずしも意識したような連動性は得られなかったわけです。


 また,スムーズにスペースを突くような展開ができたとしても,そのスタイルを90分プラス押し切ることができず,「時間帯限定」になってしまうことが多かった。


 そんなチームに,「形」と言える部分が見えてきた。


 もちろん,相当に荒削りだし,ひとりひとりの選手が持っているポテンシャルを思えば「きっかけ」程度でしかない。それでも,追撃態勢を整えるにあたって前提条件がそろいつつある,という実感を得るには十分なゲームだったのではないか。


 ということで,相変わらず1日遅れでFC東京戦であります。


 今節,キックオフ直前のスタティックな状態では4−4−2ボックス,と表現すべきシステムを採用していたように感じるが,動的な部分では“3.5バック”的な時間帯が多かったように思う。


 ごく大ざっぱな表現をすれば,左サイドがダブル・アウトサイドを採用した4バック的なスタイル,右サイドが3バック的なアウトサイドを置いた形を意識しつつ,最終ラインでの安定感を重視して3バックの要素を織り込む,という意識をしていたのではないか,と感じる。SBがウィング・バックのように高いポジションに入る時間帯には,ディフェンシブ・ハーフが最終ラインに収まる形で3バック・システムと同様の最終ラインを構築する。また,サイド・アタックに関してもSBとディフェンシブ・ハーフが柔軟にポジション・チェンジをかけながら応対することで,相手の攻撃ユニットを徹底的に抑え込む,というゲーム・プランを持っているように受け取れた。


 また,4バック導入初期には看取された,SBがボール・ホルダーをチェイスしながら中央方向へと絞ってしまうために本来消せるはずのスペースがガラ空きになる,という形に関しても今節に関してはある程度修正されていたように思う。


 また,前線から積極的にボール・ホルダーに対するプレッシャーを掛けていく,というファースト・ディフェンスにかかる要素が加わったことで,相手の攻撃的な圧力が高まった時間帯においてもディフェンシブ・ハーフを含めた守備ユニットがギリギリの状態で守備応対を繰り返すという形が少なくなりつつある,という点においては「安定感」を取り戻しつつあるように見える。


 ただ,攻撃面においては「さらなる微調整」を必要としているように思う。


 周囲を活かしながら,自らの能力を活かす方向性を見出す,と言うよりも,ひとりひとりの能力を前面に押し出す形での「局面打開」という意識がまだ強いように感じる。


 シンプルにボールをエリアに持ち込み,フィニッシュへと至る。決して間違ったアプローチだとは思わないが,ボール・ホルダーに対するバックアップが遅れている,あるいはバックアップが入っているにもかかわらず,DFを引きはがせずにボール・コントロールを失うという局面がまだ修正されていないし,スペースを狙ったパスに対して,レシーバ側がそのスペースに対する意識を持っていなかったために攻撃が途切れてしまう,という形も見えた。


 2006シーズンと比較して,守備面での安定感が欠けるという部分には,ひとつには攻撃面がフィニッシュにまで持ち込めずに中途半端な位置でボールを奪取されてしまう,という部分があるように思う。前線の持っているポテンシャルであり,パフォーマンスを活かすためのスタイルが,今季においては「依存」という方向性に微妙に傾き,同時にコンディションが上昇しきらない焦りが,「周囲を活かすことで自らを存分に活かす」という方向性を抑え込んでしまう。カッティヴェリア,という部分が“チームのために”という方向性で束ねられているのではなく,ひとりひとりの方向性が微妙にズレを生じている。そんな印象もどこかにあった。


 2007シーズン立ち上がりからどこかにつきまとっていた「悪循環」を断ち切る,そのきっかけに今節のゲームがなるのではないか。「縦」への鋭さを持った選手が前線へと戻り,アウトサイドを含めて「縦」への速さを主戦兵器とすることが可能になりつつある。恐らく,シーズン当初から意識しているだろう「コンパクトに,ボールをシンプルに走らせながら攻撃を組み立てる」という戦術的なイメージを,スペースに走り込む,という要素をしっかりと織り込みながらさらに具体化,熟成させていく。


 シーズン折り返しに差し掛かるタイミングで,いよいよ2007スペックのプロトタイプ,と呼べるようなものが見えてきた。今季におけるベスト,かも知れないが,あくまでも「通過点」としてのベスト,として捉えるべきゲームだろう,と思う。ここからどれだけ熟成を進められるか,がシーズンの鍵を握るように感じる。