振り出しに戻る名門。

「名門」という形容をするに,躊躇する必要のない実績を持ったクラブです。


 1969〜70シーズンには欧州カップ戦を制し,ビッグイヤーを掌中に収めているし,UEFAカップを奪取した回数も2回を数える。国内のみならず,ヨーロッパ域内を意識してもプレゼンスを確保していたクラブであります。ですが,ここ数季の動向を見ていると,クラブ・マネージメントの問題が現場に影を落としてしまっているように感じます。エールディビジにおいても後塵を拝し,ヨーロッパでのプレゼンスを高めるきっかけすらつかめずにいる。その傾向は,第1期にも感じられるところだったはずです。


 ちょっと現実的なことを言えば,チーム・ハンドリングを意識する前に,クラブとの“ポリティクス”を制する能力を高める必要性を感じているのではないでしょうか。


 さて,今回も欧州ネタをフェイエノールト新監督にファン・マルワイク(スポーツナビ)をもとに。


 この記事を書いた中田さんが指摘する2001〜02シーズンですが,ある意味でこのクラブの分水嶺になったシーズンではなかったか,と感じます。


 中田さんが「個性あふれるメンバー」と評したように,このときはすごく充実した戦力を保有していました。ですが,同時期からエールディビジというリーグの位置関係に翻弄されはじめたようにも思うのです。いわゆる,パワー・バランスというヤツです。このパワー・バランスに対抗する手段であったり,主力選手を引き抜かれることを想定した契約対策を徹底してこなかった,という部分があるように感じるのです。そのためか,クラブとしての体力は2001〜02シーズンをピークに,間違いなく下降曲線を描いてしまったように思いますし,ファン・マルワイクの後任としてチームを率いたルート・フリットにしても,チーム強化などの面でクラブとの齟齬をきたしていたように感じます。


 アウトサイダーとしては,チームが機能不全に陥っている,という部分よりも,クラブ・フロントがどのようなクラブを指向しているのか,という明確なビジョンが失われているかのような印象を与えていることに不振の原因があるような印象を持っています。


 この部分が,修正されているかどうか。恐らく,ファン・マルワイクとしても気になるところでしょう。


 チーム・ビルディングの初期段階は,間違いなくフロントとの共同作業になるはずです。そのときに,どれだけクラブが指揮官のリクエストに(財政的な制約はあるにせよ)応えていくことができるか。フェイエノールトロッテルダムが本格的に浮上できるかどうか,の試金石はまず,この点に求められるように感じます。