古豪復活、のカルチョ。

ひさびさに,純然たる欧州ネタなどを。


 2007〜08シーズンのセリエAであります。降格あれば昇格あり,ということで,ちょっと昇格組の話など。


 まずは,ユーヴェであります。


 カルチョ・スキャンダルの中心にあったクラブでありますが,この強烈な逆風を何とか現場が跳ね返した,という感じがします。仲裁による減算を経て,勝ち点9をもともと失った状態からのスタートでしたが,シーズン成績を見ると,全42節のリーグ戦を“28勝4敗10引き分け”で乗り切ってみせた。しかも,アウェイ・マッチでの勝利数は唯一の2ケタ(11勝)。さすがに,ホーム・ゲームと比較してしまうと引き分け数や負け数が増加していますが,それでも実力的にはB規格を大きく飛び越えたクラブだった,ということを示しているように思いますね。


 そんなユーヴェを率いていたディディエ・デシャンでありますが,2006〜07シーズン満了をもってクラブを去り,2007〜08シーズンにAの舞台で指揮を執るのは,クラウディオ・ラニエリであります。かつて,イングランドプレミアシップチェルシーなどで指揮を執った監督であります。


 どちらかと言えば,トラップとかリッピなどのイメージが強烈ですので,ユーヴェのイメージとは違う感じのする指揮官でありますが,どんなチームを作り上げてくるのか,ちょっと興味があるのは確かです。


 さて,このラニエリさんがかつて指揮を執ったクラブ。


 リーグ戦を制覇したことも,そして国内カップ戦や欧州タイトルにしても数えるほどにしか獲得していないクラブ。なのに,「華」と表現せずにはいられないクラブ。そんなクラブも戻ってくるわけですね。


 恐らく,ピンと来たひともおられるかと。“Societa Sportiva Calcio Napoli SpA”,つまりはナポリであります。やはり,ディエゴ・マラドーナの印象が強烈に残っているひとが多いと思うのですが,よく考えてみればジャンフランコ・ゾーラも在籍していましたし,パオロ・ディ・カーニオも確か,ブーツルームに自分のブーツを掛けていた時期があるはずです。このふたり,イングランドのひとたちにも愛されていましたですな。ゾーラ選手はスタンフォード・ブリッジディ・カーニオ選手はアップトン・パークとちょうど,ロンドンの西と東に分かれる形であります。


 とまあ,戦力的な部分ではビックリするような選手がいたはずなのに,不思議とスクデットが遠かったような。恐らく,スクデットに届かなかった時期が長かった,というのがクラブにとってボディ・ブローだったのでしょう,財政的な破綻をきたし,3部リーグまで落ちる羽目になる。


 そんな部分を思えば,よくぞ復活を遂げたな,という感じがします。


 さらに、昇格を勝ち獲ったもうひとつのクラブ。欧州タイトルこそ獲得していないものの,クラブ創設年である1893年から5年を経過したばかりの1898年から3連覇,さらに1902年からも3連覇を達成するなどスクデットを9回獲得し,国内カップ戦獲得回数は1を数える古豪。


 かつて,カズが在籍したことで知られる“Genoa Cricket and Football Club 1893 s.p.a”,ジェノアであります。確かに,歴史を紐解けば「古豪」という意識を持ちはするのですが,カズが在籍していたときも,飛び抜けてチームのバランスが高い,であるとか,戦術的な先進性を感じさせるクラブと言うよりは,典型的な中堅クラブのような感じがしていました。最大限好意的な表現をすれば,よくまとまった感じはするのだけれど,ちょっとネガティブな表現を使えば拠って立つべきストロング・ポイントや、帰る場所としての明確なスタイルを持たないクラブ,という感じもしていました。そんなクラブが,ひさびさにトップ・リーグでの戦いに臨むことになるわけです。


 この2クラブがいきなりAで活躍をできるか,というとなかなか難しい部分があるかも知れません。ただ,彼らが昇格を果たしたことが,いい意味でのインパクトを与えてくれるのではないか,と感じます。坂巻さんのコラム(gooスポーツ - NumberWeb)でも触れられていますが,これらのクラブを追い掛けているサポータであったり,フットボール・フリークの存在が,リーグ戦に熱を与えてくれるのではないか,と感じるのです。


 カルチョ・スキャンダル以降,どうしても影の部分を意識せざるを得なかったイタリアン・フットボールの世界でありますが,来季は古豪復活によって,ひさびさにリーグ戦の熱狂を感じることができるのではないか。そんな期待があります。