主導権(A3・上海申花戦)。

「主導権」という部分で,今季は不安定性を感じる部分が多い。


 ブルズ・カップにせよ,プレシーズン・マッチにせよ。


 また,リーグ戦においても立ち上がりから明確に「浦和のフットボール」を押し出せたゲームはそれほど多くないようにも感じる。


 「流れ」という,何とも不確かな要素ではあるのですが,この要素が今季はどこかで滞っているような感じがしますし,何ともスッキリしない感触を残す要因になっているようにも感じます。


 最終節・上海申花戦であります。A3チャンピオンズカップの話ではありますが,実際には2007シーズンに共通する問題点を忠実に再現してしまったような感じもします。


 ひとりひとりの選手に関するコンディション面も関わっているのでしょうが,戦術面での不安定さなども関わる形で,ゲームへの入り方が安定しない,という感じがします。最終節も,どうも同じ図式にはまり込んでしまったように感じるわけです。


 本来,立ち上がりから攻撃的な姿勢を前面に押し出すことでリズムを作り出す,というのは浦和が持っていたスタイルでもあるはずです。早い時間帯で先制点を奪取し,相手を引き出していく。その中で生じるはずのスペースを突き,さらにリズム掌握を確固たるものとする。ハーフコート・カウンターを主戦兵器としていた2004シーズンにせよ,プレッシングとリトリートの要素を巧く組み合わせようとした2005シーズン,その方向性を徹底して結果指向へと振った2006シーズンにせよ,指向していたフットボール・スタイルは概ね類似していたはずです。


 そして,このフットボール・スタイルを支えていたものが,中盤が持っている機能性ではないか,と。


 ですが,2007シーズンは中盤がシッカリとかみ合っていないような感じがします。恐らく,“コンパクト”というキーワードはあるのだろう,と感じるのですが,その“コンパクト”の方向性が前線に合わせる形でのコンパクトなのか,それとも最終ラインを基準とするコンパクトネスなのか,がハッキリと共有されていないように受け取れるわけです。ひとりひとりのコンディションが伴っていないと,さらにこの印象が濃くもなる。


 結果として,最終ラインにかかる守備負担が必要以上に重いものとなる。


 リーグ戦,あるいはACLを考えても,夏場に入るわけですからコンディション面での管理はより難しくなるはずです。そのときに,主導権を相手に掌握されることなく,シッカリとしたゲームの入り方ができるように,メンタル・マネージメントを含めて的確なチーム・ハンドリングが必要になってくる,と思うのであります。


 とは言え,リアリスティックに勝負に出るべき大会だと思ってもいないわけです。


 国内リーグ戦を考えると,規約の存在によって“ターンオーバー”を徹底するのは難しいところがあります。ですが,ACLの存在を考えると,「計算できる戦力」をひとりでも増やしていく必要があります。もちろん,ノックダウン・トーナメントに入りますから,グループリーグの時ほどに日程がタイトに詰まることはないと思います。とは言え,局面によってはACLを実質的に優先したチームを編成し,リーグ戦での体制を(規約に抵触しない限度において)変化させることも十分に考えられます。


 そのときに,誰がスターターとなろうとも,チームとしてのパフォーマンスが安定していることが最も重要ではないか,と。


 その意味で,確かに海外公式戦ではありますが,A3はリザーブを含めてのリコンディショニング,という要素もあるはずですし,戦力的な評価をアウェイという実戦環境で行う,というテーマもあったものと感じます。


 長いシーズンを戦うわけですから,間違いなく総合力を問われる時期が訪れる。トーナメント・ドローが決定したACLノックダウン・ステージを筆頭に,国内リーグ戦もまもなく再開されますし,ヤマザキナビスコカップも決勝トーナメントがはじまる。夏場の厳しい時期に,チームの持っている総合力が問われるようなスケジュールが待っているわけです。そのときに,チームとしてのパフォーマンスが安定して発揮されるならば,“A3合宿”にも十分以上の意味があった,ということになるのではないか,と思います。