対オーストラリアA戦(IRB・PNC)。

本戦を前に,いささか厳しい現実ではあります。


 もちろん,オーストラリアAに対して,ベスト・メンバーを組んできているわけではないから,「敗戦」ということはともすれば織り込んであったかも知れない。しかし,立ち上がりでリズムをつかみながら,相手にリズムを奪われてしまう。


 可能性を一方で見せながら,ハッキリと脆さを露呈する。


 コレでは,日程面が非常にタイトに組まれ,主力選手だけでは乗り切れない可能性が高い,当然チームとしての総合力が問われることになるRWC本戦にむけて,問題が残ってしまっている,と言わざるを得ないように思うのです。


 ということで,IRBパシフィック・ネーションズカップ(IRB・PNC)第3戦,オーストラリアA戦であります。


 このゲーム,JKさんはひとつのテストを仕掛けたように感じます。
 主力というよりは,若手選手を多く起用してきたわけです。
 サンゴリアス,というより早稲田のCAPを務めたと言う方が通りの良いだろう佐々木選手や,同じく早稲田の矢富選手などが先発して,箕内選手などの主力はお休み,という形でした。この姿は,恐らくRWC本戦を見据えた形ではないか,と思うわけです。


 ですが,ごく大ざっぱな言い方をしてしまえば,いささかゲームのリズムを奪われてからの流れが悪すぎたような感じです。かつての日本代表がラグビー・ネイションズと対戦したときも,同じような印象がありましたが,「時間帯限定」でらしさを表現することはできるわけです。
 ですが,らしさを表現すると同時に,相手のギアが攻撃方向に入っていくわけです。
 そのときに,少しは抑え込むことができるのだけれど,チームに掛かっていく負荷が高くなっていくことで,ディフェンスが小さな綻びを見せていってしまう。その綻びを,強豪国というのは見逃さずに,鋭く突いてくる。


 ちょうど,同じような形になってしまったな,という印象があるわけです。


 サンスポさんの記事はいつもラグビーフットボールを丁寧に扱ってくれているのですが,この記事を書いた記者さんも指摘するように,RWC本戦は“2チーム”で戦う必要性が高いものになっています。
 いわゆる強豪国は比較的試合間隔がシッカリと取られているのですが,日本代表を考えると,移動距離も比較的ありますし,ゲームとゲームとの間の日程的な余裕もそれほどありません。そんな状況で,本戦進出を現実的な目標に掲げているわけですから,ゲームによってチームの編成を柔軟に変化させる必要が出てきます。


 いわゆる,“ターンオーヴァ”ですね。


 理想だけを掲げるならば,ウェールズワラビーズ相手に主力をぶつける,ということになるでしょうが,現実的にグループリーグ突破を狙うには,主力級の選手をカナダであり,フィジーにぶつけていく必要があるでしょう。となれば,今回と同じように若手中心のチームを編成する可能性は高いわけです。


 出村さんのコラム(スポーツナビ)でも触れられていますが,戦術交代が認められるようになってから,ラグビーフットボールの基盤は15人の選手から大きく広がっています。
 言い換えれば,どれだけ高い能力を持った選手をそろえられるか,がチームを機能させるための大きな要素になりつつあるわけです。若手選手をオーストラリアA戦へ起用した,というのは,“ジュニア・ワラビーズ”とも言うべき強豪を相手にして,猛烈に高い負荷が掛かった状態でどれだけの能力を示すことができるか,というテストでもあるでしょう。そのテストをクリアできた部分,そして当然,大差による敗戦でありますからクリアできなかった部分が出てきているように思うのです。


 スコッド再編成も含めて,チームの方向付けを再修正してくるのではないか,と思います。