対横浜FM戦(07−13)。

攻撃面での問題が,守備面に影を落としている。


 今季チームが抱えている問題のひとつは,攻撃面での「形」が描ききれていないことにあるように感じます。ということで,いつものように1日遅れであります。


 まず,ちょっと思うのはポジション・チェンジがなかなか繰り出せていないことです。


 確かに,ディフェンシブ・ハーフは2人の選手で構成されているのですが,攻撃面がスムーズに機能しているときの浦和を動的なバランスで言えば,シングル・アンカーとして意識した方がいいはずです。ですが,2007シーズンでは“ツイン・アンカー”のままで動的なバランスが作られている時間帯がいささか多い。


 4−4−2(ダイヤモンド)では自動的にシングル・アンカーとして意識されるものの,4−4−2(ボックス),あるいは3バック・システムを採用しているときには,ディフェンシブ・ハーフがともに低めの位置で守備応対をしている時間帯が多いわけです。そのために,どうしてもオフェンシブ・ハーフと前線だけが攻撃を構成せざるを得なくなってしまう。それでも,最終ラインから積極的に押し上げをはかる形があれば,一定程度積極的なポジション・チェンジが演出できるのですが,最終ラインが積極的に前線へと顔を出す,とか,ディフェンシブ・ハーフが巧みにカバーリングを意識しながら攻撃を支える,という形にまでは熟成が図れていない。


 今節,スターターとして阿部選手と啓太選手がディフェンシブ・ハーフとしてクレジットされていましたが,彼らがもっと積極的に前線へと顔を出せるように戦術的なイメージが描き出されないと,フィニッシュへの局面で分厚さを作り出すことは難しいし,窮屈な形でフィニッシュに持ち込まざるを得なくなるように思うのです。


 とは言え,攻撃面の問題が単純にディフェンシブ・ハーフのポジション・チェンジ,あるいは積極的なオーヴァーラップという要素だけに落とし込めるわけでもない。当然,オフェンシブ・ハーフや前線など,基本的な攻撃ユニットにも「ピクチャーのズレ」を指摘する必要がありそうです。


 端的に言ってしまえば,「局面打開を焦り過ぎている」のではないか,と感じます。


 ひとりひとりの持っている能力が高いからこそ,仕掛ける意識が高くなるのだろうとは思うのですが,「自ら仕掛ける」という意識が強すぎるがゆえに,まわりを巧く使いこなせなくなってしまっているように感じるのです。もともと,守備ブロックやディフェンシブ・ハーフに位置している選手は視野が広く,大きくボールを展開して相手守備ブロックを揺さぶりにかかる,その前提条件は充足しているはずです。
また,センターに破壊力を持ったチームであればなおさらに,アウトサイドの重要性は増しているはずです。単純に,「縦」への鋭さを作り出すだけにとどまらず,攻撃の起点として,強く意識していなければならないポジションであるとも思うわけです。にもかかわらず,相手を引きつけるかのように足元をギリギリで狙ったショートレンジ・パスを繰り出し,そこから局面打開を図ろうという意識が強い。そのために,生じたスペースを的確に突くことができなくなっているし,アウトサイドを徹底的に生かしながら相手守備ブロックを自陣へと押し込む一方で,横方向へと引きずり出すことが難しくなってしまう。のみならず,厳しくプレッシングを仕掛けられることでコントロールを失えば,チームが攻撃的にバランスを崩しているタイミングでカウンター・アタックを受けることになる。今節の相手は,間違いなく浦和のスタイルを見越してプレッシングを仕掛ける,というプランを持っていたはずです。


 ワシントン選手がいささか窮屈な形でフィニッシュへと入っていかなければならないのは,自身のコンディションの問題もあるのでしょうが,それ以上に相手守備ブロックを揺さぶりきれていないことも関わっているように感じます。


 加えて言うならば,今節は1トップ2シャドー,という静的な布陣だと感じるのですが,実際にはポンテ選手は2トップ体制でのトップ下のように動かざるを得なくなっているように受け取れます。チームがコンパクトさを維持しきれなかったことも作用しているのでしょうが,アウトサイドに流れながら攻撃を組み立てる局面が多かった。このことからも,本来攻撃リズムを生み出すべきアウトサイドとの連携が戦術的に整理しきれていないのではないか,と感じるところがあります。


 ・・・「決めるべきタイミングで確実に決めることができていない」。


 端的に表現してしまえばこの言葉に集約されるのかも知れませんが,個人的にはひとりひとりが持っている戦術的なイメージが微妙なズレを生じていて,そのズレがフィニッシュへ行き着くまでにかなり大きなズレへと増幅してしまっているような印象があります。それでも,勝ち点を単数であるにせよ獲得することはできている。チーム,というよりもひとりひとりのパフォーマンスによって何とかチームを支えながら,勝ち点を確保している,という見方も成立するかも知れない。


 でありながら,リーグ・テーブルでいまのポジションを維持できているのは,戦術,という触媒を通していない選手のパフォーマンスを示している,という感じもします。


 しかし,さらなる高みを目指すにはこの状態で踏みとどまっているわけにはいかない。積み重ねた勝ち点1を意味あるものとするには,「使い,使われること」というシンプルな約束事を基盤にして,戦術的なイメージを徹底して束ね上げていくことこそ,必要最低限の条件ではないか,と感じます。そのためのA3であり,中断期間であってほしい,と思うのです。