対名古屋戦(07−12A)。

ホルガーさんのやり方というのは,案外理解しやすいところがありまして。


 スターターを発表するときに,「使わないシステム」でポジションを表記することが多いんですよね。3バックでゲームに入るときには,BK登録をあえて4人にしてみたりとか,シャドーを使ってくるときには,どう見てもMFである選手をFWに登録してみたりする。


 今節においても,この形は踏襲されておりました。ということで,名古屋戦であります。


 ちょっとした変更が入ってはいますが,「原点回帰」な3バックであります。


 アウトサイドに入っている選手の能力を考えれば,アウトサイドでの数的優位を最初から構築するよりも,コンビネーションの中から数的優位を構築する方向性を指向する。同時に,中央に特徴を持っている相手を考えれば,アウトサイドでの守備は昨季のようにパス・コースを絞り込むような方向性に持っていき,最終ラインでの安定した守備応対を可能にする。攻撃面では,当然ながら全方位的な能力を持っている前線を基盤としつつ,前線との距離感を保ちながらシャドーとアウトサイドが有機的に絡んでいく,というゲーム・プランではなかったかな,と。


 ただ,立ち上がりは「受けて立つ」局面がちょっとあったようにも思えます。


 恐らく,相手のスタイルに対してアジャストできない時間帯があった,ということになるのでしょう。最終ラインにまでボールを落とし込み,そこから攻撃を構築するというようなチーム戦術ではなく,最終ラインはむしろ中盤でのボール奪取を支援する形で位置取りをしている感じでした。そして,ボール奪取位置はディフェンシブ・ハーフ,あるいはそれよりも前方の位置に設定されているような感じになっていた。プレッシングを基盤にしながらリズムを作る,という形です。その形に対しての対処に手間取っていた,というのが立ち上がりだったかと。


 とは言え,前半45分間を費やして相手にアジャストする,というような形にはならず,比較的早い時間帯でリズムを取り戻していたように思います。


 ちょっとリズムが悪いときのパス・ワークはショートレンジが多く,しかも足元を狙ったパスが多いために,パサー,あるいはパス・レシーバに対して寄せられてしまうケースが目立ってしまっていた。そのために,チームのバランスが攻撃的な部分に傾いたタイミングで逆襲を受ける,というイヤな形が比較的増えてしまったような感じです。ですが,今節はピッチサイズを最大限に活用したパス・ワークを強く意識していたように感じます。アウトサイド,特に左アウトサイドが高い位置を維持していることから,ターゲットが増えているという印象も強かった。


 加えて言うならば,ボールを保持してからパスを繰り出すまでのスピードが(相対的であるにせよ)上がっている印象があった。4バックを基盤としているときには,パス・レシーバの位置関係を確認したり,チーム・バランスを確認する時間が必要となっていたのか,パスまでの動きがスムーズさを欠く部分があったように感じられたが,2006シーズンでのパッケージに戻してからは,流れがスムーズさを取り戻したようにも感じられる。この点は大きいと思うわけです。


 攻撃面を考えると,シークエンスの中からフィニッシュへ持ち込む,という部分では微調整を繰り返す余地を残しているな,という部分を感じもしますが,CK奪取数からもうかがえるように今節はフィニッシュ直前にまで持ち込めるようにはなってきている。攻撃面でのコンディションも整ってきつつある,という形でしょうか。


 ・・・ホントは,3だろうと4だろうとコンパクトさを維持できると,安定してパフォーマンスを発揮できると思うのですが,恐らくは浦和の基盤になっているだろう守備面を考えれば,4よりは3の方がより安定した動き方ができるかな,と思います。特に,プレッシングから細かいパス・ワークを繰り出して攻撃を組み立てる,と言うよりも,相手を最終ラインへと追い込みながら攻撃を受け止め,比較的高い位置をとっているアウトサイドと中央を生かす形でシンプルな攻撃を組み立てる,というスタイルのように受け取れますから,単純な「数的優位」という考え方で3と4を使い分けると言うよりは,3を基準としながら戦術的なオプションとして4を使う,という方向性になるような感じです。


 少なくとも,3が戻るべき「基盤」として強く意識されるようになれば,チームの安定性は戻ってくるのではないか。その安定性をもとに,4へのゲーム中の戦術的なシフトが仕掛けられるようになると,4をトライした意味もあるようにも思う。そのためには,もっと柔軟に戦術交代を仕掛けてほしいですね。チームのリズムを巧みに変化させるためには,“戦術的なメッセージ”を送ることも有効なはずですし,できる陣容はあるはずですから。