IRBパシフィック・ネーションズカップ。

日本代表にとっては,絶好機に違いありません。


 ラグビー・ワールドカップ(RWC)を控えて,積極的な強化を図っていきたい,というのがコーチング・スタッフを含めて日本代表に関わっているひとたちの意識でしょう。


 “互角,あるいはそれ以下の相手と戦うことで加速態勢を作り上げる”という考え方もあるでしょうが,ラグビーフットボールという競技では,残酷なまでに実力差が得点差に反映される部分があります。それだけに,ギリギリまでチームの持っている潜在能力を積み上げていく努力が求められるはずだし,実戦で発揮できる能力を引き上げていく必要があるはずです。逆に言うならば,ギリギリまでチームの実力を引き上げるべく最善の努力を繰り返さないと,恐らく目標としている「決勝トーナメント進出」は非常に難しいものになってしまうようにも思うのです。


 こう考えていくと,A代表であったり,ジュニア・チームであるという留保はあるけれど,オーストラリアやニュージーランドと実戦の舞台でぶつかることができるのは貴重な機会でしょう。ということで,IRBパシフィック・ネーションズカップのことについて大会スケジュール(JRFUオフィシャル)をもとにしながら,書いていこうと思います。


 ごくカンタンに言ってしまえば,日本とオセアニア地域の強豪国で戦われるリーグ戦,ということになります。しかも,シッカリとしたホーム・アンド・アウェイ方式を採用しています。アジア・オセアニア地域版のシックス・ネイションズという感じであります。


 ただ,そうは言っても「力関係」というのは厳然として存在しているものでして。


 IRBワールド・ランキング(IRBオフィシャル・英語)を見ていただけるとお分かりか,と思いますが,ニュージーランドとオーストラリアは強豪国の中でもさらに強豪の位置にいます。RWCで優勝を現実的な射程に収めているチーム,と言っていいかも知れません。彼らは,若手中心で組まれている(はずの)A代表相当のチームを,この大会には送り出す方針のようです。言い換えれば,フィジーやトンガ,あるいはサモアあたりであればA代表であっても十分に勝機を見いだせる,という判断があるのでしょう。


 さて,日本代表ですが。


 この列挙したオセアニア地域の代表チームよりも,ワールド・ランキング下位に位置しているわけです。考えようによってはこの大会,参加できるだけ儲けモノ,という考え方もあるかな,と。


 ただ,参加だけしていればいい,というものでもないわけです。


 本気になって,RWCで決勝トーナメントへと駒を進めようと思うならば,本戦でも対戦することになるフィジーには互角以上の勝負を挑まねばならないし,他のオセアニア地区代表に対しても,“カンタンには行かない相手”という印象を強く与えておく必要があるはずです。そしてもちろん,強豪国ではあるけれど,A代表相手にフル代表が大差を付けられるなどということがあってはならない。勝ちに行く,という姿勢を前面に押し出していかないと,RWC本戦に向けてチームが持っている能力をさらに上積みすることも,また持っている能力を徹底的に引き出すことも難しくなるでしょう。


 このような“ホーム・アンド・アウェイ”でのリーグ戦,しかも強豪との真剣勝負ができる機会が増えていくことが,日本代表の実力を引き上げる大きな要素になることは間違いないことです。継続開催の鍵を握り,そして2015年RWC招致を現実的なモノとするのは,この大会における日本代表の成績。そんなくらいの意識で,ちょうどいいような気もします。