トップ・リーグと地域密着。

ひょっとすると,転換点になるかも知れません。


 いままで,ラグビーフットボールの試合が行われる場所は,クラブの本拠地に近い競技場というよりは,秩父宮であったり近鉄花園である場合が多かったように思います。


 確かに,ラグビー・フリークのひとたちにアピールしやすい場所だったりしますし,東京であり大阪という大きな街(の近く)にありますから,集客面で有利,という考え方もあったのかも知れません。

 ですが,選手個人だけにとどまらず,クラブにあっても“プロフェッショナル”というものを現実的な視野に入れなくてはならない時期にあって,秩父宮近鉄花園「だけ」に固執する理由はないはずです。むしろ,自分たちがトレーニングをしている本拠地,その近くのスタジアムで試合をすることで,地元のひとたちに積極的にアピールしていく必要があるはずです。


 そもそも,強いから足を運んでくれるひとは,弱くなれば足を遠ざけてしまうかも知れない。また,もともといるラグビー・フリークだけを意識したクラブでは,地元に愛されるなどということはあり得ない。地元のひとたちに愛されたいならば,積極的に地元に働きかけ,自分たちの競技,その魅力を徹底的にアピールしていく必要がある。


 Jリーグのクラブ,特に地域密着を前面に押し出している新潟や甲府,そして浦和のような姿を意識したクラブが,いよいよ出てきたように感じられます。ということで,今回は試合スケジュール(2007〜08シーズン・TOP LEAGUE OFFICIAL)をもとに。


 2007〜08シーズンにあって,地域密着の姿勢を前面に押し出したクラブとは,三洋電機ワイルドナイツです。


 もともとワイルドナイツは,トップリーグ発足時から「地元開催」を意識してきたクラブ,という認識があります。確かに,観客収容数や集客効率などでは秩父宮に劣るかも知れませんが,本拠地近くの太田であったり,敷島公園サッカー・ラグビー場での試合開催をしてきています。そして,大泉町太田市にある小学校などを丁寧に巡回し,ラグビーフットボールという競技を普及させるという地道な活動を展開してきてもいる。そして,いよいよ機が熟した,という判断がされたのでしょう。2007〜08シーズンから,基本的に三洋電機ワイルドナイツはホーム・ゲームを太田市運動公園陸上競技場で開催することになったようです。


 面白くなってきたな,と感じますね。


 かつて,ワイルドナイツは強豪・ブレイブルーパス太田市運動公園陸上競技場に迎えたことがあります。このとき,ワイルドナイツブレイブルーパスに対し,ほぼ理想的と言えるゲームをつくっていきます。実際にこのゲームに足を運んだひとや,足を運んだひとから話を聞いたひと,あるいはワイルドナイツの選手,コーチたちからラグビーを実際に教わった子どもたちの期待感は,間違いなくチームに対するチカラになってくれるはずです。このチカラが,「ホームらしさ」を作り出してくれるといい。誰かが,選手個人のチャントを考えつく。そして,そのチャントが競技場を包み込むように広がっていく。
 そして,「太田には魔物が棲んでいる」などと,相手に強く認識させてやってほしい,と思っています。ラグビーフットボールの世界に,本当の「ホーム・ゲーム」とはどういうものか,示してほしいと思うのです。


 15年前,フットボールに起きた化学変化を,ラグビーフットボールにあっても起こしてほしい,と思うのです。地域で愛されるクラブが増えることで,結果的に代表チームが強くなっていく。そんな,フットボールであったり,ラグビー・ネイションズで当然のこととなっていることが日本でも見られるようになればいい。そう期待させるシーズンではないか,と感じるのです。