対市原・千葉戦(07−09)。

消化不良,という印象がつきまとうゲームだったような感じがします。


 第9節・市原・千葉戦のことであります。


 戦術パッケージ,という部分では「実質的な3」と言ってしまっていいと思います。
 恐らく,闘莉王選手と堀之内選手がCB,坪井選手と暢久選手がSBというように,4で理解をしようとすればできるのですが,実際には2006スペックを再び持ち出したな,という感じでしょうか。
 もともと,暢久選手が比較的高い位置を維持している一方で,坪井選手は相対的に低い位置を維持し,ポジショニングもアウトサイドに近い位置,というよりはセンターにちょっと絞り込んだような位置に入っている。イニシャルの時点でも,3.5バックと表現したくなるような4に感じられます。


 ただ,単純に2006スペックを持ち出したわけでもない。


 今節のポイントは,流動的な左アウトサイドということになろうか,と思います。
 最終ラインを4と評価した場合,数字的な収まり方としては4−3−1−2ということになるのでしょうが,3の部分が左アウトサイドを兼ねている,というのが今節の特徴だったようです。
 ちょっと見ると,啓太選手と阿部選手がツイン・アンカーという感じなのですが,実際にそうでもない。左サイドから攻撃を仕掛けるとすると,ちょっとセンター気味のポジションに入っていた啓太選手,あるいは長谷部選手が相手の出方を見ながら,タッチライン方向へと開いていきます。そして,チャンスと見るとタッチライン沿いを駆け上がり,チャンス・メイクを担う。先制点を演出したのは,まさしくこの形だったわけです。


 いつもならば,センターでチームの重心を巧みにコントロールしているディフェンシブ・ハーフ,啓太選手が大きくアウトサイドへと開いていって,ゴールライン近くのポジションからセンターに入ってくる選手を確認するかのようなタメを作って,トラバース・パスを繰り出す。このときの動き方を見ると,今節チームが意識していたのは3の動き方に近いように思えるのです。
 ただ,左アウトサイドを流動的な形へと変更したことで,坪井選手にかかる守備負担が増加してしまった,というようにも思えます。純然たる4ならば,アウトサイドに対して高い位置からのプレッシャーが掛かるはずなのですが,実際には3に近い動き方をしていることでスペースを作り出してしまう局面があった。坪井選手と,ディフェンシブ・ハーフのポジションに入っていた啓太選手,長谷部選手がコンビネーションをピッチ上でも頻繁に確認していたようですが,攻撃面はかなりの収穫を確認できた一方で,守備面ではどのタイミングまでセンターに絞らずにアウトサイドでの主導権を失わないか,という部分での戦術的なイメージが整理し切れていないかな,という感じもしました。


 「勝ち点3」を奪取できるゲームでありながら,スローインからのリスタートに対して反応がズレていったことで,センターから飛び込む選手に対してマークが外れてしまった。一瞬の隙を見事に突かれて,相手のショートハンドにつけ込むどころか,ゲームを難しくしてしまったのですが,決定機を演出できていなかったわけではない。
 確かに,「勝ち点2」を失ったような印象はあるけれど,“Not our day”であっても最低限の勝ち点を確保するというタスクはこなした。長いシーズンにあって,こんなゲームもある。そんな感じもしています。


 と考えていますれば,「消化不良」という冒頭の言葉はドローに終わった(勝ち点2を失ってしまった)ということを意味しているつもりはありません。むしろ,もうちょっとほかの部分で感じているのです。


 ごくカンタンに言ってしまえば,「パッケージ」が安定しないことがすごく気になるわけです。


 4への移行は,「仕方なく」という部分があるかも知れません。
 しかし,コレクティブなフットボールを展開している柏相手に,4を使いこなしたかのような印象を与えもしているわけです。後半に失速こそしているものの,チームとして組織的に相手を崩す,より高い位置でボールを奪取し,縦に鋭い攻撃を仕掛けていくという形は明確に感じられた。ならば,なぜこの形を徹底して熟成させる,という形が見えてこないのか。
 どこか,4が持っている攻撃的な要素を使いたい一方で,3を主戦兵器とすることでの安定性も同時に狙おうとすることで,かえってチームとして目指すべき方向性がブレてしまっているのではないか,と感じるのです。
 もちろん,「戦術的な幅」が大きく広がる,というメリットもあるし,3も4も使えることになることで,ゲーム中のギア・チェンジ,その可能性が広がっていく,というメリットもあるでしょう。しかし,明確に「戻るべき場所」を設定した上で戦術的な幅を広げるならばまだしも,「戻るべき場所」が明確になっていないにもかかわらず,さらに戦術的なオプションを増やしていくかのようなアプローチが果たして妥当なものと言えるのか。


 2006スペックが結果指向・安定性重視のスタイルで貫かれていたことは確かです。“アンチ・スペクタクル”という評価を受けてもいる。ただ,チームとして意識すべき戦術的なイメージが,明確に共有されていた,という見方も成立するはずです。
 このようなコンセプトが,2007シーズンにあって各選手に浸透しているでしょうか。
 まだ,明確に2007シーズンにおける浦和の戦い方がセットされているようには感じられない。戦術交代を積極的に仕掛けられない,ということは恐らく“パッケージ”が固定できないことともかかわっているのでしょう。


 浦和の戦力的な重心は,間違いなくミッドフィールドにあるし,センター方向での破壊力も潜在的には維持されているはずです。この条件をシッカリと意識して,パッケージを早い段階で固定していかないと,不安定さはなかなか解消されないのではないか。そんな感じがします。