“Powerplay”という誤解。

アイスホッケーを見たことがあるひとならば,何となく理解してもらえると思います。


 相手チームの選手がペナルティ・ボックスに収容される。収容時間は,仕掛けたファウルによって違ってきます。マイナー・ペナルティならば2分,ダブル・マイナーペナルティならば4分というように。
 この,数的優位に立った状態のことを,パワープレイというわけです。しかし,このパワープレイ,得点機に直結するかと言えば,決してそんなこともないから難しい。


 ごく大ざっぱな言い方をすれば,50/50の局面以上に自分たちのスタイルを徹底していかないとパックがスムーズに動かないし,ゴールを奪うのは難しくなってしまう。「心理面」が大きく作用するからだろう,と思っています。
 相手は,シンプルに守備を固めてくる。その守備網を打ち破るには,徹底してパックを動かすことで相手を引き出していかなければならない。パス・スピードが下がってしまったり,攻撃の鋭さが落ちてしまうと,“Powerplay”,その残り時間を示す減算タイマーは,いつの間にかゼロになってしまったりするわけです。


 この図式は,フットボールにおいても大きく変わるところはない,と思っています。


 セント・オフによって,ひとり相手は少なくなっている。事実ですが,相手の攻撃的な部分が大きく削がれるわけではないし,守備意識が高まる,という要素を考えれば,決してネガティブな部分ばかりとも言い切れない。
 決して決定的とは言えないネガティブな要素を,本当にネガティブな要素とするのならば,11−11のときよりも早くボールを動かしていかなければならないし,さらにスペースを狙った動きを続けていく必要があるはず。でも中野田では,ちょっと窮屈さばかりが目立ってしまったような気がします。大きくボールを展開しながら仕掛けていくというよりは,すごく狭いエリアを主戦場にして局面打開を狙う時間帯がちょっと多かった。


 数的優位を徹底的に生かし,得点機へと直結させるためには,相手守備ブロックをさらに揺さぶるような方向での仕掛けが必要になる。相手をショートハンド(数的不利)に追い込んだとしても,そのことからパワープレイを得点とという結果へと直結させられるわけではない。


 追い込んだならば,なおさらに攻撃リズムを高めていかなければならない。どこか,「力任せ」という意味でのパワープレイばかりに意識が振り向けられてしまって,「数的優位」という意味でのパワープレイには意識が向けられなかった。
 決定力という要素も確かに気になるところではありますが,リズムを積極的に変化させていくという部分がなかなか機能しなかった。ちょっともったいないように思うのです。