頑張ってるXJR。

ひさびさに,まったくフットボールとは関係ない話など。


 環境負荷,なんて言葉がバイクの世界でも強く意識されるような時期であります。


 となると,精密な制御がなかなか難しいキャブレターよりも,各種センサーによって最適な燃料噴射率に調整してくれる,ヒューエル・インジェクションを採用しているバイクが増えていくのは当然のことですし,マフラーにしても,自動車のように触媒を装着したバイクも増えてきています。細身のサイレンサーを持った集合管,なんて時代は過去のこと,という状況ですね。


 そして当然,エンジンも緻密な制御をしやすい形態が求められることになります。


 温度管理がシッカリとできる,水冷モデルが性能を引き出すにも有利ですし,環境面でも有利ですから,空冷モデルが次第に表舞台から下りていっています。カワサキで言えば,ゼファー・シリーズもディスコンになるとのことですし,スズキではかつて「高性能」の代名詞でもあった“油冷エンジン(実質的には空冷エンジンで,補助的にオイルを冷媒としても位置付ける,という感じであります。)”を搭載するバンディットがファイナル・モデルをリリースするなど,ちょっとした転換点になっているような感じであります。


 しかし,ヤマハさんは主力モデルであるXJRをカタログから落とすことはせず,空冷エンジンを搭載し続ける,という判断をしたようです。もちろん,厳しくなる排ガス規制をクリアすべく,シッカリとアップデートしたうえで。



 たとえば。週末には峠道で(あんまり迷惑にならない程度にトバしつつ)スポーツ・ライディングを楽しむのが好きで,それ以外にはあんまりバイクを引っ張り出さないならば,XJRという選択はしないかも知れません。同じヤマハならば,YZF−R1だったり,さらに戦闘的なセッティングに振られている(らしい)YZF−R6を選ぶでしょうし,ほかのメーカで言えばGSX−Rだったり、(可処分所得が追い付いていないことを徹底的に無視して,希望だけを言えば)ドゥカティ1098だったりMVアグスタF4を選択すると思います。


 逆に,「バイクのある日常」を楽しみたいならば,XJRのようなバイクを真っ先に選ぶとも思います。空冷が持つ,いい意味での「あいまいさ」であったり鷹揚さというのが,普段使いのバイクにとってはすごく大事なことのような感じがするのです。


 持っている性能も高いけれど,乗り手にある種の自制心だったり覚悟を求めるのがスポーツ・バイクかな,と思っていて,最低でもライディング・ブーツを履いて,レザー・スーツを着ていないと安心して乗り出せないような感じがしてしまうのです。バイクに対して失礼というか。でも,XJRのようなバイクはいい意味で,「普段着」を受け入れてくれる,少なくとも受け入れてくれる可能性が高いように思うのです。


 そんなバイクが,開発陣の努力によって生産継続となった。このことは,他社の動向が「水冷シフト」に移行しているいま,ちょっとうれしいことのようにも思うのです。