対磐田戦(07−05)。

ダイヤモンド”のようにも理解できるが,“ウィング”という時間帯も相当長い。


 むしろ,今節はウィング・タイプの陣形を使っている時間帯が長かったのではないか,と感じる。
 スターターを表面的に受け取れば,2トップの布陣を採用している。ただ,実質的な部分を理解すれば,2トップの一角がアウトサイドに近い位置にポジショニングし,中盤を構成する選手が同様にアウトサイドへとポジショニングする。そして,ウィンガーとオフェンシブ・ハーフがポジション・チェンジを繰り返しながら,局面に応じてSBを前線に送り出すような動きを織り込みつつ攻撃を組み立てていく。
 その前提として,中盤が仕掛けていくファースト・ディフェンス,その質が変化しつつあることやパスの微妙な変化が感じられる。相対的に低い位置へと構え,安定性を重視する守備ラインに追い込んでいくようなプレッシングではなく,むしろボール奪取からシンプルに動き出す,その前提としてのプレッシングを仕掛けていく時間帯が増えている。また,ボールを奪取すると,ロングレンジ・パスをシンプルに前線へと繰り出すよりも,中盤やSB,前線が連動しながらスペースを作り出すような動きを見せ,そのスペースを狙うようなショートレンジ〜ミドルレンジ・パスを積極的に交換しながらフィニッシュを狙う,という方向性へと微調整を加えつつある,という印象を持った。


 ただ,今節においては「全体をコンパクトに維持する」という部分で大きな課題を残していたように思う。


 相手の積極的な攻勢を受け止める時間帯においては,最終ラインが比較的低い位置にまで下がってしまう一方で,中盤はどうしても攻撃面とのバランスを取らざるを得ず,結果としてディフェンシブ・ハーフと最終ラインの間に生じるスペースや,SBとディフェンシブ・ハーフのポジショニング・バランスによって生じてしまうスペースを使われてしまう時間帯が多かったように感じる。
 相手に先取点を奪取される,その要素にはSBとディフェンシブ・ハーフ,そして左アウトサイドに近いポジションを取るサイド・ハーフとのバランスが乱れたことがあるように感じるし,その副次的な影響としてセンターでのオフ・ザ・ボールでの仕掛けに対してディフェンシブ・ハーフが早い段階で対応することができず,最終ラインが余裕を持って守備応対できるような状態にはならなかったことがあるようにも感じられる。


 「勝ち点3」を奪取しているにもかかわらず,気になる要素を中心に書いておりますが。


 カウンター・アタックを基盤とする攻撃に関しては,ある意味で浦和のDNAを形成するような要素ですし,この部分に関してはある種の信頼感を伴った「戻るべき場所」という感じも持っています。
 それゆえ,ポゼッションを強く意識した攻撃を指向するとしても,カウンターという要素を封印する必要などないと思いますし,もうひとつの主戦兵器としてさらなる熟成を図ってほしい,とも感じています。得点の場面は,「らしさ」を存分に表現していたように思うわけです。


 さて,4バックですが。


 「実戦を通じて熟成を図る」という意味合いも相当強いのでしょうが,中盤でのバランスと最終ラインとのコンビネーションという部分で,まだ発展途上という印象を持ちます。
 ただ,中盤を流動的に,という方向性は感じられました。永井選手がトップ,と言うよりは左アウトサイドにポジションを取るウィンガーのように感じられる時間帯が多く,ポンテ選手も右アウトサイドにポジショニングするウィンガー的な動きをしながら,センターに位置する小野選手とポジション・チェンジを掛けていく。彼らのポジション・チェンジがどれだけ流動性を確保できるか,という部分が,攻撃面での分厚さを演出する,ひとつの要素ではないか,と感じます。
 同時に,最終ラインがどれだけ高い位置を維持できるか,という部分も求められるでしょう。
 後半,磐田の攻勢を受け止めていた時間帯,最終ラインは相当低い位置から動けずにいて,SBも低い位置からの攻め上がりを余儀なくされていたように感じます。
 どうしても,ストリクト・マンマークに近い守備をせざるを得ないタイミングも確かにありますが,攻撃を跳ね返すと同時に守備ラインが押し上げていかないと,攻撃面では間延びを起こしてしまうし,守備面ではバイタル・エリアに不要なスペースを提供してしまうことにもなる。


 発展途上,という状況にあって「勝ち点3」を奪取したことは最大限評価して然るべきですが,同時に提示された課題も,4バックをモノにするためにはどうしてもクリアしておくべき,というように感じます。クリアできれば,かなり浦和のフットボールは面白くなる。そんな感じもしています。