アンカーと4の姿。

(現段階での)今季の特徴,とふと考えてみるに。


 スターターの表記は当てにならない,ということでしょうか。


 今節を考えてみますと,2006シーズンのパッケージである3−5−2であります。で,実際にはダイヤモンド型の4−4−2という話もあるのですが,実際にピッチでの動きを見てみると,4−4−2と言うより4−3−3(4−5−1)という時間帯も結構多いような印象があります。


 3−5−2(3−6−1)を基本的なパッケージにしていたときも,アウトサイドからの攻撃は浦和のスタイルを支える重要な要素でした。この,アウトサイドという要素をさらに強化する,という意図があるのならば,磐田戦で見られたようにアウトサイドが縦方向に2人並ぶ形を意識する方が分かりやすいように感じます。
 左サイドならば,阿部選手をスムーズに前線へと送り出す,という方向性でのポジション・チェンジであり,右サイドならば暢久選手の攻め上がりをサポートしながら,守備バランスを取る。同時に,ウィンガーとセンター・ハーフが流動的なポジション・チェンジを仕掛けながら攻撃を作り出していく。


 3から4へ,という流れは,ある意味浦和の強みを分かりやすくする方向性かな?と思うのです。


 しかし,そう話はスムーズに進まない。


 3からスムーズに移行が進まない要素としては,(物理的に熟成に必要な時間が足りない,という大前提はありますが)ディフェンシブ・ハーフを啓太選手ひとりとして意識している部分があるから,ではないか,と思いますし,同時に最終ラインがいささか低い位置を取ってしまっている,という部分があるからのように思います。
 2006スペックなフットボールでは,中盤のプレッシングも最終ラインが仕掛けている守備網に相手を引っかけるような方向でのプレッシングであり,全体的なバランスが自陣方向へと傾いていました。対して2007スペック(初期型プロト,とでも言えばいいでしょうか。)ではトランジションを速める方向でのプレッシングへの変化が求められているような感じです。また,ダイヤモンド型の中盤を意識すると,トップ側の頂点と,最終ライン側の頂点との距離が離れてしまうと,相手にパスを繰り出す,あるいは積極的に走り込めるスペースを提供することになるし,そのパスやスペースを埋めるためにディフェンシブ・ハーフや最終ラインが引き出されてしまうことになります。


 この点,まだ熟成不足であることを,明確に磐田戦は示してしまった。


 アウトサイドに対するケアが徹底されていなければ,また最終ラインが相対的に高いポジションを維持できないようだと,4を導入した意味がなくなるように思うのです。
 このときに,ディフェンシブ・ハーフが2枚あったとしたら,もうちょっと3のときの応用が効いたかな,と感じるのです。3ならばウィング・バックがこなしていた役割をウィンガー,そしてSBが担っている。彼らとのコンビネーションは3のときの応用編になる,と思うわけです。
 磐田戦のように,ディフェンシブ・ハーフが啓太選手ひとりだと,啓太選手に中盤全体のコーディネーションという役割がかかってもくるし,ケアすべきエリアがかなり大きくなってしまう。また,全体がコンパクトさを維持できなくなると,さらに中盤での守備が後手に回り,最終ラインでの守備応対がばたついてしまうことにもなる。
 また,守備ブロックがアウトサイドに引き出されようとするときに,ディフェンシブ・ハーフがもうひとりセンターに残っていれば,センターからの飛び出しであったり仕掛けを最終ラインとの連携で潰しにかかることもできる。
 確かに,3のときも“アンカー”として意識すべきディフェンシブ・ハーフは啓太選手であって,長谷部選手はむしろディフェンシブ・ハーフの位置に入っている攻撃的な選手,という位置付けではあります。ただ,守備面でも長谷部選手はかなり大きな役割を持っていたし,この部分を考えるとダイヤモンド型の中盤は,浦和がモノにするにはちょっとした障害があるような感じがします。


 だからと言って,最終ライン,中盤をフラットに布陣するのは2006シーズン以上に「安定性」重視の方向性になるような気もする。組織的なプレッシングから,全体が大きく上下しながら攻守をこなす,という形は,どこかチェルシーのようでもあるし。
 

 「二兎を追う」がごとく,3の良さを継承しながら4の良さも獲得する,とするならば,いつか“ダッチ・ジャーマンハイブリッド”なんて書きましたが,ウィンガーを使うシステムの方が浦和にははまりやすいかな,と。磐田戦で「予告編」程度に見られた流動的な中盤や前線,SBを含めたポジション・チェンジを思えば,ダッチ・スタイルな4バックに近づいていくのではないか,と思ったりします。