シックス・ネイションズ(2007年版・あとがき)。

イングランドの最終戦,やっぱり波乱要因でありました。


 かなり時期を外しておりますが,シックス・ネイションズ(6ヶ国対抗戦)であります。


 北半球のラグビー・ネイションズが真正面からぶつかり合うリーグ戦でありますし,RWCイヤーでもありますから,注目度はいつもよりも高いのではないか,と思っております。実際,RWCを考えますと,日本代表はウェールズと同じグループ(プールB)に入っていますし,ウェールズのポテンシャルを知っておくことは悪くないわけでして。


 ということで,最終節,勝手に注目しておりましたウェールズイングランド戦から見ていきますと。


 今季のシックス・ネイションズではまったくと言っていいほど精彩を欠いていたウェールズが相手ですから,イングランドを追いかけているラグビー・フリークのひとたちは波乱が降りかかるという想像はしなかったでしょう。ひょっとすれば,“ボーナスステージ”とでも考えていたかも知れません。チャンピオンシップがちらついたひとも,アームズ・パークの観客席にはいるかも知れない。


 ですが,ゲームというのはそう単純なモノでもない。


 このゲーム,主導権を掌握していたのはウェールズと考えていいと思います。
 立ち上がりの時間帯でトライ,コンバージョンを奪い,またペナルティ・ゴールをシッカリ決めることでリズムをつかむ。ただ,トライ数だけを取り出すと,イングランドウェールズともに前半に集中していて,しかも2と同数であります。ゲームを分けたのは,要するにキック・レンジでのペナルティを犯したかどうか,あるいはキック・レンジにまで攻め込めているかという部分であり,最終的にはキッカーの正確性が大きな要素となった,ということになります。


 ドロップ・ゴールというと,ちょっとアメリカンな感じがしますが,ラグビーフットボールでも案外積極的に狙いに行くプレーなんですよね。シッカリとした守備応対が繰り返されることでディフェンスがなかなか破れない,という局面を打開するために,キック・レンジに入ったタイミングでゴールを狙いに行く,というアプローチも結構あるわけです。
 このゲームでのウェールズは,仕掛けを含めると2回ドロップ・ゴールを狙い,そのうち1回を成功させています。


 とまあ,このゲームではキックが勝敗を分けた,という感じであります。


 確かに,100%フィットとは言いかねるコンディションではありましたが,決して簡単な相手じゃあないです。しかも,今回同様にアームズ・パークがベニューに指定されている。シビアなゲームを想定しておくべきでしょうね。


 ま,RWCの展望はさておいて。最終節を前に,イングランドにもチャンピオンシップの可能性が残されていたわけですが,この結果によってイングランドはキックアウト,と。


 となると,フランスか,アイルランドか,ということになるわけです。


 結論から申し上げると,最終節は無風でありました。


 ともに,勝ち点2を奪取したわけです。でありますから,フランス,アイルランドともに総勝ち点は8で並びます。ということで,「直接対決」の結果,であります。第2節第2日の結果,ということですね。
 このとき,アイルランドはホームであるクローク・パーク(ランズダウン・ロードは全面改修中なんだそうであります。)にフランスを迎えます。迎えますが,であります。ペナルティ・ゴールという形で先手を取られたアイルランドが,接戦を落としてしまうという感じのゲームでありまして。このゲームの結果が,最終的にチャンピオンシップの帰趨を決めたわけですね。


 ということで,フランスがチャンピオンシップを持っていったわけです。


 勝負強さであったり,局面での強さのようなものをイメージすると,フランス代表となかなか直結するものではないような感じがしていたのですが,今季シックス・ネイションズでは勝負強さをシッカリ発揮していたような感じです。むしろ,イングランドは最も重要なアウェイ・マッチで相手のモチベーションを受け止めてしまったな,と。
 また,アイルランドは奪取した勝ち点だけで言えばフランスと並んでいますから,ある意味ではチャンピオンシップを獲り逃したショックがあるかも知れませんが,戦いぶりは悪くなかったと思います。


 戦いぶりで問題が,というのはやはり,ウェールズが筆頭でしょうね。


 最終節からも理解できるところですが,もともと持っているポテンシャルは低くないはずです。にもかかわらず,そのポテンシャルが巧くチームのパフォーマンスへと直結してはいかなかったな,と。特に,攻撃面でこの傾向は顕著です。得点数を見ると,ダントツの最下位。失点数はそれほどひどくはないだけに,ゲームを落とした原因はディフェンスの破綻と言うよりは,攻撃が巧く機能しなかったことに求めるべきでしょう。そのために,1勝を挙げるにとどまってしまったのだろう,と思います。


 下位3チームを見れば,スコットランドはいささか失点数が多いためにウェールズの後塵を拝することになり,結果として最下位となってしまっていますし,4位に入ったイタリアの失点数も決して少なくはない。恐らく,守備からの再構築を求められるだろう,この2チームの方が提示された課題は多いような感じがします。


 しばらくすると,RWCであります。果たして,ラグビー・ネイションズ(特に欧州)のパワー・バランスがこの6ヶ国対抗戦の図式通りなのか,それとも大きな変化が出てくるのか。開幕までの時期にどれだけのことができるか,が,この図式に変化を与えるものと感じます。