ペルー戦メンバー発表から思うこと。

海外組初招集,であります。


 今回は,中村俊、高原を初招集 ペルー戦=サッカー日本代表(スポーツナビ)という記事をもとに書いていくことにします。


 えっと。今回発表されたプレイヤーに関してはこの記事なり,各スポーツ・メディアさん,あるいはJFAさんのオフィシャル・リリースを参照いただくとして(!?)。


 一次発表の注目点はやはり,中村俊輔選手と高原直泰選手の招集であります。FWがいささか少ないのが気になりますが,この点に関しては“二次発表をお楽しみに”ということなのかな?と思います。・・・と言いますか,そうでないと困るんですけどね。


 いままで地味な印象を持っていたひとたちにとっては,「やっとかよ!」と思う話でありましょうが,指揮官としては「どうしても必要な時間」という意識があったものと思います。


 イビツァさんは,イロイロと「語録」を繰り出す中で本当の意図を巧く隠しているような部分もあるのですが,代表チーム構築,というものを相当細かい段階に分けて考えているのではないか,と思うところがあります。
 また,イビツァさんのアプローチを眺めてみるに,2010年を最終年度とした構築ステップを作る,というよりは,その先にも継続できる余地を十分に残した「基盤」のようなものを作る,という意識もあるかな?と思う部分があるわけです。


 と言いますのも。


 「日本代表」が持っているフットボール・スタイルとして,明確に戦術的なイメージが浮かんでくるでしょうか。また,Jリーグにおいて強烈な戦術的インパクトを残し,ほかのクラブに対して大きな影響を与えているクラブが存在しているでしょうか。


 このどちらも,明確な回答が出せない話であります。


 もちろん,「日本代表」も長い歴史を持ってはいます。いますが,その歴史から“日本代表が表現すべきフットボール・スタイル”を明確に導き出せるか,と言えば,かなり難しい部分があるはずです。たとえば,ブラジル代表だったり,アルゼンチン代表のように,フットボーラーのみならずフットボール・フリークや一般のひとたちが持っている戦術的なイメージが,ある程度の範囲に収まっているとすれば,話は大きく違う。単純に高いポテンシャルを持っている選手,あるいは実際にパフォーマンスを発揮している選手を招集したとしても,戦術的イメージの微調整を短期間にチェックするだけでチームが機能していく部分もある,かも知れない。程度問題ではありますが。
 しかし,代表が持っているフットボール・スタイルというものがまだ確立しているわけでもなく,リーグでの各クラブのフットボール・スタイルが一定範囲内に収まるわけでもない。オランダ代表におけるアヤックス・アムステルダムだったり,かつてのイングランド代表だったらウェストハム・ユナイテッドのように,代表のスタイルに影響を与えるようなクラブがあるわけでもない。
 ならば,明確な戦術的フレームを作っておかなければ,(最悪の事態を想定すれば)チームが戻るべき場所を失ってしまうことになり,混乱が破綻へと直結してしまうことにもなりかねない。そのために,「基盤」を整備するための時間を必要としたのだろう,と思うのです。当然,地味な作業になるわけですが,代表として「戻るべき場所」ができる,というのは単純に2010年に向けたチーム構築過程,その重要なステップというだけでなく,その先にも大きな意味を持つステップだとも考えられるわけでして。
 で,このフレームがある程度にまで構築できたという意識があって,同時に「代表」である以上は結果指向という基本的な姿勢を崩すことなどできない,という部分が重なって,今回のスコッド決定という形になったのだろう,と思うわけです。


 当然,このフレームがそのまま南アフリカにまでキャリー・オーバーされるとは思わないし,何よりイビツァさん自身が熟成,進化を止めることはないと思います。
 フレームを進化させ続ける中で,強烈なタレントを武器として使いこなす。そんなイメージの初期段階として,ペルー戦を位置付けるならば,さらに面白いのでは?なんて思うのであります。


 ・・・それにしても,「玄関は開けてある」的な表現をとりつつ,シビアにコンディションを見極めているぞ!というメッセージも同時にリリースで発信する。実に,見事な手際というか,タヌキぶりですな。「ホメずにいられない」指揮官であります。