UK型ネーミング・ライツ。

そもそも,“ネーミング・ライツ”という考え方がUS的ですから,UK型というのはおかしいのですが。


 ネーミング・ライツを「特定の会社」が取得することで得られるメリットを考えると,UK型という言い方をしても良いような,そんな感じがするのです。


 最もわかりやすい例が,「日産スタジアム」(横浜国際総合競技場)ですね。


 もともと,日産自動車と横浜の関係は深いわけです。いわゆる,「本拠地(本社が置かれている場所))」という考え方では東銀座,新橋演舞場の近くですが,「本店所在地(商業登記に登載されている場所,ですね。)」に関しては,現在も横浜市神奈川区宝町が公式に登録されているはずです。また,追浜には生産拠点もあるし,モータースポーツの本拠地機能(ファクトリー)も置かれていました。さらに,MM21地区に本社機能を移転させ,本店,本社ともに創業の地である横浜へ移転しようとしています。その横浜でのプレゼンスを高める一環として,横浜国際に関するネーミング・ライツを取得したと考えるのが,(いささか経済紙的な考え方ですが)ごく自然かな?と思います。


 このネーミング・ライツによって,横浜FMが本拠地とする横浜国際,そのスタンドに“NISSAN”というロゴを描き出すことができたというのは,イングランドのスタジアムと同じパターンというわけです。


 UKではスタジアムの所有者は基本的にフットボール・クラブです。PLCという,営利社団法人ですね。ゆえに,比較的容易に競技場の座席を使ってスポンサー企業のロゴを描き出せるわけです。ユニフォーム・サプライヤーのトレード・マークであったり,プリンシパル・パートナーのロゴを描き出せる。この効果を生んだわけですね。さらに,エントランスのグラフィックによって,実質的に「横浜FMが横浜国際を所有している」のと同じ効果を生むことに成功した。


 フットボール・クラブの親会社が本拠地のネーミング・ライツを取得することで,実質的に競技場を持っているかのような効果を生み出す。


 恐らく,NTTだったりNTTドコモさんは,この姿を意識しているだろうと思います。命名権者を募集 大宮サッカー場 15日から4月5日まで(埼玉新聞)であります。


 もちろん,大宮さんと関係の薄い会社がネーミング・ライツを取得することも可能性があります。むしろ,US的なネーミング・ライツから見れば,この可能性の方が高くもあるでしょう。また,埼玉新聞の連載記事にもありましたが,大宮さんはNTTさん方向だけを意識するのではなく,もっと大宮方向,そしてもうちょっと広めに埼玉県方向を強く意識する必要が指摘されています。実際には,それほどNTTだけを意識しているわけではないのだろう,とは思うのですが,逆に言えば地元自治体や経済界との関係が希薄だ,ということを示しているのでしょう。地元との関係が強固とは言えない状態で,NTTがさらにプレゼンスを高める方向に動けるか,というと,難しい部分を感じることも確かです。


 もっと早い段階から,継続して地元に働き掛けていけば,UK的な効果を生めるネーミング・ライツへスムーズに進めたと思うのです。確か,トレーニング・グラウンドとして秋葉の森も指定されているはずですが,不思議と練習拠点は大宮からは離れている志木になっている。秋葉の森でさえ,いささか大宮の中心からは遠いのに,心理的な遠さをさらに強めてしまってはいないか。


 旧大宮市の時代から,もっと積極的に自治体に対してリクエストを出して,意見を求めるべきだったでしょう。相川さんにしても,ディスコミュニケーションを問題にしている。この問題を解決する契機として,今回のネーミング・ライツが使えるようであれば,何かが変わるような気が,アウトサイダーとしてはするのです。