対Persik Kediri戦(ACL Matchday 1)。

まず最初に結論的なことを言えば,「勝ち点3」を奪取することでACL初戦を終えた,ということは大きな収穫だと思います。


 グループリーグを考えれば,全6節の短期決戦であります。また,心理的にも体力的にも大きな負担を強いるであろう長距離移動を伴う,ホーム・アンド・アウェイスタイルのリーグ戦です。しかも,このグループリーグを1位で通過しないことには,セカンド・ラウンド(決勝トーナメント)へと駒を進めることはできません。


 となれば,「爆発的な攻撃力」をひとつのゲームで見せつけることよりも,安定して「勝ち点3」を奪取できる体制を整えておくこと,そして最低でも「勝ち点1」は確保する姿勢を崩さないことこそが最優先課題となるはずです。


 どうしても,過去のACLを見ていると「破壊力」を見せ付けておく必要性を感じますが,それ以上に「結果」を引き出すための現実的な戦略をどれだけ具体的に用意できているか,という部分の方が大きな問題のような感じがするのです。その意味で,「勝ち点3」を確保しておかねばならないホーム・ゲームにおいて,確実に「勝ち点3」を奪取することに成功したことは,間違いなく大きな収穫だと思います。


 このことをもとに,ゲームを考えていきますと。


 やはり,リーグ第1節で受けた印象と,それほど違うところはないな,と感じます。


 いつものように,レーシング・バイク的な表現を使えば。


 06スペックから,エンジンやギアボックス,サスペンション・ユニットなどの主要コンポーネントには大きな変更はない。ただ,レーシング・バイクの運動特性を根本において左右する最重要パーツ,フレームに変更が加えられている。現段階では,06スペック・フレームに構造的な補強を追加するのか,それとも新たな設計思想をベースにフレームを新たに設計し直すのか,その姿がなかなか見えていない。また,レース・トラックの特性に応じた実戦的なセッティング変更などというステップを踏む段階にはない。むしろ,フレームの特性を100%安定して引き出すためには,セッティングの方向性をどう設定すべきか,チーム・スタッフがブレイン・ストーミングを繰り返している最中,という感じがするわけです。


 つまり。チームとして目指すべき方向性まではイメージが固定しているのだろうけれど,その方向性を具体化するステップで,ひとりひとりの選手が持っている戦術的イメージがしっかりと束ね上げきれていない,という段階かな?と感じるのです。


 ごく大ざっぱに言えば,ボールを大きく動かしながら相手守備ブロックを揺さぶり,かつシンプルなパス・ワークから相手を崩していく攻撃を意識しているのだとは思うのです。ただ,イメージする攻撃をどのように具体化するか,という段階で,イメージを整理するための時間が不足していたのでしょう,ピッチでズレを修正するためのタイム・ラグが発生しているように見える。


 また同時に,06シーズンまでのシンプル,かつ現実主義的なフットボールがまったく不必要かと言えば,必要不可欠な要素でもある。この2つの要素をどれだけスムーズに切り替え,チームとしての強さを増していくのか。“ステップ・アップ”を意識するがゆえの課題が開幕ゲームでも見られた,ということになると思うのです。


 そこで,ペルシク・ケディリ戦でありますが。


 まだ,リーグ第1節で受けた印象と大きく違うものではありません。攻撃を組み立てるにしても,互いの戦術的なイメージが「確信」というレベルにまで至っていないから,どこかで確認や判断のための時間が必要となり,結果として攻撃が怖さを伴ったものとして構築しきれない。


 それでも,基盤となるべき攻撃的イメージが,ゆっくりであるにせよ束ねられてきたような印象もあります。


 相手の戦い方を見れば,ボール奪取までを意識した,徹底したフォア・チェックからのプレッシャーという状況にはなかった。また,守備ブロックの裏を徹底的に突くような,リアリスティックなフットボールを押し出すような姿勢もなかっただけに,あまり大きな評価をすべきではないかも知れませんが,第1節と比較して整理できてきた部分もあるかな?と。浦和オフィシャルに掲載されている試合速報,その下に掲載されているマッチ・スタッツを見れば,このゲームにおけるシュート数は16。直接,間接を含めたフリーキック奪取数に関しては15をマークし,ペルシク・ケディリ陣内深くにまで攻め込んだ結果となるコーナーキック奪取数については,16を記録しています。


 恐らく。フレームワークとしてのチーム戦術は理解度を深めつつあるのでしょう。


 一方で,2つの要素をスムーズに切り替えていくことが求められるためか,局面ベースでの微妙な攻撃リズムのズレはなかなか解消しきれないのでしょう。一定程度の攻撃は組み立てられているにしても,フィニッシュに向けた組み立てとして理想的な展開とまでは至っていない。それだけに,フィニッシュの精度に影響が出ているようにも思える。


 時間との勝負でチームを熟成させていく。かなり,シビアなチーム・ハンドリングを強いられることは間違いなさそうですが,少なくとも解決への方向性は見えつつある。熟成スピードは,緩やかではあるにせよ上昇曲線を描きはじめたかな,と思います。