対横浜FC戦(07−01)。

依然として,調整過程であり,熟成作業を進めなければならない状態であることには間違いない。


 だが,マイスター・シャーレを意識するのであれば,どんな状態にあろうとも「勝ち点」を意識した戦い方をしていかなくてはならない。敢えて厳しく見れば,チームとしての連動性向上をテーマとして掲げているだろう2007シーズン立ち上がりにあって,2006シーズンのような戦い方をしている,と評価すべきかも知れない。それでも,「勝ち点」をしたたかに奪取していく,という姿勢は間違いなく確認できる。


 立ち上がりから,相手が戦術的に徹底してきたフラット・ディフェンスをどのように攻略すべきか,チームとして明確なイメージが構築できていなかったのではないか,と感じる。


 ひとりひとりの選手が持っている戦術的なピクチャーが,チームとして表現すべきピクチャーとして束ね上げられていない。局面ベースで見れば,シンプルな構成から相手守備ブロックに対して揺さぶりを掛け,ギャップを突くようにしてフラット・ディフェンスを破りにかかるというフットボール・スタイルが表現できていた時間帯もあった。
 しかし,ゲーム全体を俯瞰するならば,ボール・ホルダーに対して,周囲がどのようにパスを引き出すのか,あるいはボール・ホルダーをサポートしていくのか。「組織として相手を崩していく」というコンセプトを理解はしているものの,ハッキリとした戦術的イメージとして共有されていない時間帯が多かったように思う。そのズレを,強烈な自己主張を通じて自律的に修正するというよりは,「個」の持っているポテンシャル,パフォーマンスによってリアリスティックなフットボールを展開する,という選択をしたように感じる。


 今節における最大の収穫は,チームとして表現すべきフットボール・スタイルを構築する途上,不安定なチームにあって「勝ち点3」を奪取できたという部分ではないか。


 さて,もうちょっと細かく見ていきますと。


 やっと“07スペック”,そのプロトタイプが見えてきた,という段階がこの第1節だったかな,と感じます。


 “06スペック”のチームは,プレッシングの方向性がリトリートに結び付いていました。そのために,ファースト・ディフェンスがボール奪取までを視野に入れたものではなくて,パス・コースを絞り込んでいくような方向性になっていたな,と思うのです。
 その方向性を,段階的に“04スペック(後期版)”のような,ボール奪取を意識したプレッシングへと変化させていくつもりなのでしょう。その初期段階として,最終ラインが06シーズンと比較して高くなってきていますし,コンパクトさが表現できるようになってきている。


 ですが,“プロトタイプ”と言うには当然理由があって,「スペース」に対する戦術イメージがまだかなり断片的な感じがするのです。


 特定の時間帯であったり,特定の局面だけを取り出せば,恐らくホルガーさんが指向するフットボールのスタイルとはこんな感じかな?というイメージはできるのです。足元,と言うよりもその先にあるスペースを意識したショートレンジ・パスをダイレクトに繰り出しながら,積極的にポジション・チェンジを繰り返し,相手守備ブロックにクラックを作り出していく。当然,このスタイルを徹底するためには,アウトサイド,中央と前線のコンビネーションが熟成されていくことが求められるわけです。


 ですが,今節に関しては足元に収まる時間帯の方が多かったように感じます。


 相手は,浦和が苦手とするタイプの守備スタイルです。いわゆる,フラット・ディフェンスというヤツですな。ボール・ホルダーに対するアプローチを可能な限り速め,数的優位を構築しながらボール奪取を仕掛ける。このディフェンス・スタイルを打ち破るイメージが時間帯限定で表現できているときもあったのだけれど,基本的には相手の執拗な守備応対に手を焼く時間帯が多かった,と言うべきでしょう。
 たとえば。比較的プレッシャーが緩いスペースに張っている選手に対してパスが繰り出されるとしましょうか。そのときに,スペースを潰しにかかろうと,相手ディフェンスは連動した動きを見せてきます。そのときに,パスを繰り出した選手が攻め上がるであるとか,近くにいる選手がボール・ホルダーの視界に収まるような動きをする,あるいはコーチングをすることでボールを呼び込んでいく,というような動きがあまりに少なく,「個」のパフォーマンスに多くを依存する時間帯の方が多かった,と思うのです。


 もちろん,ひとりひとりの選手が持っている絶対的なパフォーマンスなくして,高い戦術的なバランスを実現することはできないし,要はバランスなのですが,このバランスがまだ個の要素に大きく傾いている。ともすれば,3月〜4月中旬まではバランスを調整しながら実戦を繰り返していく。結構難しいハンドリングを強いられる時期がちょっとあるかな,という感じはしますが,ホルガーさんが指向するスタイルは,決して理想論的なものではなくて,浦和が目指して然るべきもの。そんな感じもしています。