変わりゆくものと、変わらぬものと。

日本リーグ時代からの伝統を引き継ぐクラブにとって,プリンシパル・パートナーが親会社,というケースは不思議でも何でもなく,ごく当然のことのように見えます。


 三菱重工,および三菱自工の系譜を受け継ぐ浦和ならば,三菱自動車のロゴ・マークであったりスリー・ダイヤ,あるいは商品ラインアップが露出するし,日産自動車サッカー部の流れを汲む横浜FMならば,日産自動車のロゴ・マークになる。
 特に,Jリーグが立ち上がった直後は,親会社による支援(端的に言ってしまえば,損失補填契約締結によるクラブ財政の安定化)がクラブ・マネージメントにとって必要不可欠な前提条件であり,必然的にトップ・パートナーが親会社,という関係だったように思います。


 まだ,そんな時期だったでしょうか。浦和のユニフォーム,その背中にPCメーカのブランド・ネームが入ったのは。


 Jリーグ発足直後は,同じPC関連であってもソフトウェア・ファームのブランド・ネーム,“Word Perfect”が入っていました。そのソフトウェア・ファームからPCメーカ,“COMPAQ”へとパートナーは引き継がれます。背中,となるとプリンシパル・パートナーとは感じられない部分があるのですが,「損失補填契約」という要素を考えれば,実質的なプリンシパル・パートナーは当時,背中にいたという理解をすべきかな?と思います。


 そんな「実質的なプリンシパル・パートナー」,コンパック・コンピュータさんは,1994シーズンから2002シーズンまで,そしてコンパック・コンピュータとの合併を経て誕生した,新生ヒューレット・パッカード(hp)さんは,2003シーズンのスポンサードをしてくれています。


 ・・・ちょっと話はズレますが。


 2007シーズンのユニフォーム,その背番号のフォントは,ちょっと1995シーズンあたりのフォントに雰囲気が似ているような感じがします。正確には,95シーズンのフォントには立体的なイメージを与えるためのデザイン処理が施されていますから,完全に同じ,というわけではないのですが。シルエットだけを見ると,当時のフォントをちょっと思い出します。
 今季のユニフォームも,三菱重工サッカー部時代のユニフォームからインスピレーションを得た,“deep dive”という,要するに温故知新なコンセプトを採用しているわけですが,フォントにも,温故知新がコンセプトとして引き継がれているのかな,と。


 このヒューレット・パッカードさん,いまでも浦和との関係を維持してくれています。


 MDPであります。浦和とのパートナーシップが契約満了となってからも,MDPには広告を出稿してくれています。


 フットボール・クラブにとってのパートナー(スポンサーであり,サプライヤー)は,フィナンシャルな部分が最も重要であり,それだけにスポンサーが比較的短期間に変更を受けることもあります。
 ですが,フィナンシャルな側面だけでスポンサーを見てしまうのも,どこかもったいない気がします。フットボール・クラブが持つ商品価値は,単なる強さだけではなくて,それ以外の部分の方がむしろ大きかったりする。当然,露出度が高くなければパートナー契約締結のきっかけとなる訴求度も低いでしょうが,クラブ自身が魅力的であり続けなければ,パートナーとの関係を良好に保つ,ましてや長期間にわたる契約関係の維持は不可能に近いでしょう。ちょっと古い話ではありますが,ガンナーズにとってのJVCや,マンチェスター・ユナイテッドにとってのシャープも,そんな関係であったに違いありません。
 そして,浦和にとってのコンパック・コンピュータ,その継承者であるヒューレット・パッカードさんは,場所を変えながら,浦和を支えるという選択をし続けてくれている。MDPを見ると,クラブとパートナーさんとの関係,その理想が見えてくるような気がするのです。