ファインダーを通して見える姿は。

ピッチサイドに構えているフォトグラファーさん。


 実際にピッチに立っている選手よりも低い位置からピッチを見つめ続け,ゲームの流れを読み解きながらシャッター・チャンスをうかがう。時には,選手と同じような意識でひとりの選手のプレーを見つめ,決定的なチャンスを収めようとしている。


 こんな感じかな,なんて想像してみると,フォトグラファーさんのシャッター・チャンスを狙う意識はどこか,カッティヴェリアに満ちたストライカーのような部分を持っているのかも知れないな,と感じます。


 同時に,フットボールが持っている魅力を端的に表現する,アーティストのような部分も持っているようにも思えます。フットボールを実際にピッチに立っている選手のように見つめながら,同時にスタジアムに足を運んでいるサポータ,フットボール・フリークの目線も理解している。そんな部分が,プレーの背後にあるスタンドやテラス,そこに充ちている空気を切り取る基礎にあるようにも思うのです。


 写真によって一瞬を切り取り,その一瞬でプレーをイメージさせるチカラがある。


 そんな写真を操るひとが,文章も巧い。いまも僕を笑わせるヤツ(ONCE UPON A TIME in URAWA - りそなカード)というエッセイを寄稿されている,近藤篤さんです。


 サッカー・マガジンで「木曜日のボール」というフォト・エッセイを担当されていたことを記憶しているひともいるでしょうし,MDPでフットボール・フリークやサポータ心理をよくつかんでいる,それでいて厳しい視線も合わせ持ったコラムを寄稿されていたことを憶えているひともいるのではないでしょうか。そして,近藤さんが書くシンジ選手は,やっぱり躍動感がある。スライドを見せてもらっているかのような感じ,というか。


 そして,近藤さんらしいなと思うのは最後のパラグラフです。


 ぜひとも読んでみてほしいのですが,近藤さんはシンジ選手のプレーを見て,とあるクセを引き出されたのだとか。選手よりも低い目線で,決定的な瞬間を収めるべく,ストライカーのようにプレーを見つめるフォトグラファーならば,プレーをイメージしながら片目でファインダーを見つめ,もうひとつの目でまわりの状況をチェックしているに違いない。「予測」を立てながらチャンスをうかがっている,と言って良いかも知れない。


 シンジ選手は,その経験から導かれたであろう「予測」を超えていく。あるいは,そんな予測の裏を突くような動きを平然とこなしていく。そんな瞬間が,近藤さんのクセを引き出すきっかけなのでしょう。


 そんなシンジ選手でありますが,こちらの記事(日刊スポーツ)で書かれているように,TMでは左アウトサイドで起用され,2007シーズン開幕を告げるゼロックス・スーパーカップにおいても同様に左アウトサイドでの起用が濃厚だとか。昨季,チームとしてのファースト・プライオリティが安定感であったり,継続性であったりしたためでしょう,なかなかスターター・ラインアップにその名を見つけることができなかったわけですが,そんな状況を誰よりも打破したいと思っていたのはシンジ選手に他ならないでしょう。今季にかけるモチベーションは相当に高いはず。そんなメンタル面が,ピッチに表現されれば,チームが表現できるフットボールにはさらなる幅ができるはずだと思っています。


 今季,シンジ選手を狙う近藤さんは,そのクセを引き出されながらカメラを構えるのでしょうか。