Setting in Progress.

キリン・チャレンジカップ2007 - All for 2010 - であります。五輪代表壮行試合であります。


 2月28日からスタートする,アジア地区2次予選(ホーム・アンド・アウェイスタイル)を控えて,気持ちよく勝ってもらおう,という相手ではなく,コメンタリーを担当されていた金田さんも指摘するように,2008年本戦でぶつかるような相手である,アメリカが今回のインターナショナル・フレンドリーの相手であります。


 現段階にあってはフットボール・ネイションズとして意識されることはないですが,実際には1994年ワールドカップを転機として,フル代表を頂点とする組織的な強化施策が実を結びつつあるように感じる,ラグビー的表現を使えば,ティア1へ食い込もうという野心を持っているティア2上位,という感じでしょう。
 そんな相手ですから,このゲームでは“ファイナル・スコア”が最優先課題として設定されているとは思わないし,この時期にファイナル・スコアを問うのはあんまり生産的であるとも思わない。


 予選に突入すれば,否応なくファイナル・スコアだけが評価基準になり,チームとしても,攻撃的な可能性などの内容面に踏み込んだ部分ではなく,どれだけ勝ち点を奪取できるのか,というリアリスティックな部分が問われるのだから,実力を持った相手に対して,いまのチームのどこが通用して,どこが不足しているのか,というように,セッティングをさらに煮詰めていくための課題が洗い出せれば成功,というように考えるべきか,と。


 で,ゲームを結果度外視でごく大ざっぱに思い返すに。


 チームとしての高い流動性,連動性を背景とした攻撃の構築,という(フル代表とも当然通底している)テーマは確かに表現されていたように感じますし,このゲームで採用された3トップも機能していた。
 ただ,それだけにチームの機能性を高めていくための「熟成期間」がとりにくいという部分と,チームとして拠って立つべき基本的な枠組みが構築されているのかどうか,という部分が気になるのも確かです。


 いままでの反町監督,そしてU−23のチーム構築過程を見ますと。


 ちょっとレーシング・バイク的な表現をすれば,複数のフレームを作って,どのフレームが最も戦闘力を持っているのか,という部分を実戦を通じてテストしているように見えることがあります。
 ただ,比較検証をするのであれば,どこか「変化していない要素」を作ることで,どういう変化があったのかを観察・検証する必要があると思うのですが,フレーム構築に関するコンセプトが必ずしも一致しているようには感じられない。そのためか,必要以上に不安定性を感じさせるように思うのです。


 個人的に思うに,U−23は最終的に「登録メンバー制限」によってポリバレンスを否応なく求められることになります。選手枠が決して大きくはないから,ひとりの選手が複数のポジションをこなすだけの能力,そして戦術理解力を持っている必要が出てくる。そのためには,できるだけ最終選考までに「選択肢」を広げておく必要もある。
 ただ同時に,チーム・コンセプトを端的に表現できる“ユニット”を構築しておく必要があるとも思っています。アテネ五輪において,予想外の失速をしてしまった大きな要因としては,鈴木啓太選手が(プレーという側面,チームを精神的な部分から引っ張るという側面を含めて)この“ユニット”を構築する要素であったにもかかわらず,「機能主義的な」チーム設計を優先させたという部分もあるように思えるのです。・・・もちろん,相当好意的なバイアスがかかっていますが。


 では,いまのU−23体制で,チームの表現したいフットボールを端的に表現するプレイヤーは誰か,ということを考えると,水本選手や伊野波選手,水野選手あたりかな,とは思うのですが,攻守の基盤として位置付けられるユニット,となると,まだ明確なフォーカシングがされているようには思えない。
 2次予選も,十分に過酷な戦いだと思うし,その戦いを制するためには,ある程度メンバーを固定していく必要も出てくるでしょう。フレームから変化させるチーム構成ではなく,フレームを安定させた上でのスペック変更ができるようなチームへと進化できるかどうか。


 2次予選から最終予選へ,加速態勢を作り上げながら,結果を引き出していく。難しいチーム・ハンドリングが求められることになりそうです。


 「予告編」としては感じることのできた,チームとしての攻撃コンセプト。このコンセプトを主戦兵器にまで高めるために,どういうアプローチを使っていくのか。
 2次予選初戦は,「結果」と同時に,チームを熟成させていく方向性を打ち出すことも求められる,重要なゲームになるような感じがします。