「代名詞」が持つべき権威。

秩父宮近鉄花園。ラグビーフットボールと言えば,な「代名詞」的競技場です。


 モチベーションがイヤでも高まるようなことが発表された2つのクラブが,準決勝という舞台からはちょっと想像できなかった戦いぶりを見せ,決勝へと駒を進めた。秩父宮での決勝は,2つのクラブが持っているはずの思い,その思いの強さがぶつかり合うものになるだろうことは間違いなく,いまから楽しみでありますが。


 ラグビー日本選手権・準決勝の舞台としては,確かに相応しいなと思いつつも,同時に“ラグビートップリーグ”や“マイクロソフトカップ”でも秩父宮近鉄花園の利用頻度が高い,というのはちょっともったいない感じがしてきます。


 ラグビーフットボールを長く支えてくれているのは,いわゆる大会社さんです。


 いわゆる「実業団」というものですが,強さを発揮しているクラブには確かに多くのファンがついていたなと。かつての新日鐵釜石にせよ,神戸製鋼スティーラーズ)にせよ,三洋電機ワイルドナイツ)やサントリーサンゴリアス),東芝府中ブレイブルーパス)にせよ。


 ですが,「強さ」だけがクラブの魅力の中核か?と思ったりもするわけです。


 この思いは,ここ数季のラグビー日本選手権,端的に言えば対早稲田大学戦を見ていると,よりハッキリしたものとなるように思います。本来,「クラブ」という表現を使うべきはラグビートップリーグを戦うチームであるはずなのですが,実際にスタジアムへと足を運ぶ学生さんやOB・OG諸氏の姿を見ていると,「クラブ」的な姿を持っているのはむしろ,学生チームであるはずの早稲田なのではないか,と思ったりするのです。


 臙脂を基調とするストライプ,そのジャージに対する思い入れが強い。


 コレ,対抗戦Aグループをを戦う伝統校には,程度の差こそあれ共通する傾向があると思うのです。明治は紫紺のジャージであり,慶應義塾ならばタイガー・ジャージというように。言ってみれば,テラスでスカーフを高く掲げてチャントをうたうクラブ・サポータやフットボール・フリークのような思いを持っているように感じるわけです。


 同じように,ホーム・ジャージに思い入れてくれるひとを増やすべきなのではないか,と思うのです。


 地元のひとに愛されること。そのための第一歩として,秩父宮近鉄花園でのリーグ戦,プレーオフ・トーナメント開催を減らし,クラブの本拠地に最も近いスタジアムでの開催を増やしていくべきではないか。準決勝に駒を進めたクラブで言えば,味の素スタジアム豊田スタジアムヤマハ・スタジアムでの開催が多くなるべき話ではないのか,と思うのです。2回戦総当たり制のリーグ戦には,なかなか障害が多いかとは思いますが,より多くのひとに支えてもらうためには,地味な活動になるかも知れませんが「地元密着」を強めていく以外の方法論はなかなか難しいのではないでしょうか。


 フィナンシャルな側面で凄まじいまでの規模を誇るMLBであっても,なかなか“ネイションワイド”な人気を持っているクラブは多くなく,基本的には地元に愛されていることが重要な鍵になる。同じことだと思うのです。


 ラグビー日本選手権・準決勝のカードは,ラグビートップリーグマイクロソフトカップでも見られたものです。カップ戦準決勝やカップ戦決勝を中立地であり,「ラグビーフットボールと言えば・・・」というスタジアムで戦うのは最も相応しいと思えばこそ,秩父宮近鉄花園を安売りしているように思えるのです。


 秩父宮であったり,近鉄花園はトゥウィッケナムであったり,カーディフ市街地に立つミレニアム・スタジアム(アームズ・パーク)のようであってほしい。コレでこそ,「代名詞」であり,「聖地」ではないか,と思うのですが。