「節目」の2006〜07シーズン。

確か,ヴェルブリッツを率いる朽木監督も,今季限りでというお話しとか。


 ポテンシャルがある,勝負権を持ち得るチームという評価を受けながら,どうしても成績が安定しないような感じが強くあった。加えて,昨季日本選手権にあっては「決して許してはならない“グレート・アップセット”」を早稲田相手に許し,このときに辞意を表明していたのだとも聞きます。
 ですが,強く慰留されて2006〜07シーズンもヴェルブリッツを預かった。けれど,トップリーグ・チャンピオンという称号を奪取するまでは至らない。となれば,残されたメジャー・タイトルであるラグビー日本選手権に全力を傾けるのも道理,であります。しかも,2回戦を勝ち抜いた先にぶつかる相手は,かつて早稲田を率いていた清宮監督が指揮を執るサントリー・サンゴリアスです。どうしても,準決勝の舞台でねじ伏せたいという気持ちが強いはずです。2回戦を見る限りでは,本来ならばキューデン・ヴォルテクスが見せていていいはずの高いモチベーションを見せつけていたように思います。


 その背景には,朽木監督のラスト・シーズンという意味合いもあった。なるほど・・・,という感じであります。


 ラスト・シーズンという意味では,東芝・薫田監督、今季限りで勇退…日本代表強化スタッフ入りも(サンスポ)という記事にもあるように,薫田監督も今季限りで監督を退くのだそうです。


 ただ,その背景を見ると,これ以上ない形での「勇退」ですね。


 薫田さんが東芝府中ブレイブルーパスを預かってからの全戦績が,サンスポさんには掲載されているのですが,改めて見ると驚き以外の何物でもありません。ラグビートップリーグが発足した2003〜04シーズン以降,2005〜06シーズンまで,ラグビーにおけるメジャー・タイトルはリーグ戦であるトップリーグトップリーグ上位で争われるカップ戦としてのマイクロソフトカップラグビー日本選手権というように,3つが存在していました。このどれか(シーズンによっては全タイトル)を獲得してきたわけです。


 もともと,薫田さんが現役時代の東芝府中は「高速BK」とスタンディング・ラグビーが代名詞でした。キックで大きく地域をゲインするのではなく,自陣深い位置からでもボールを積極的に展開し,ランによって地域を獲得していくというスタイルを構築していました。
 その基本的なスタイルにFW的な激しさを加え,逆にFWでありながらBKかと思うような機動力を持たせることによって,チーム全体がうねるように攻撃を仕掛けていくという形にまで引き上げた。どこで読んだかまでは憶えていないのですが,薫田さんは「親には決して見せられない練習」を選手に徹底して課していたとか。その過酷さが,シークエンス・ラグビーの基盤になっているのでしょう。さすがに,今季はそれほど圧倒的な感じまではしませんでしたが,“トータル・バランス”という言葉を思い描いてもおかしくないスタイルを構築していました。


 この実績を見れば,確かにJKを継承する指揮官として,期待したくなるところです。


 ですが,それほどのタレントであればこそ,ラグビー・ネイションで実戦的な修行をしてもいいのでは?と思ったりもします。もちろん,アイルランドニュージーランドのスタイルそのものを単純に日本に落とし込んだところで,機能するほど甘くはないし,その前に日本の特性にあったスタイルを構築すべきとも思う。
 そうではなく,ラグビー・ネイションのトップチーム,そのコーチング・スタッフがどういうクラブ・マネージメントをし,選手たちをゲームに送り出すまでに,戦術面やメンタル面を含めてどういうマネージメントをしていくのか,という部分を吸収しておいてもいいのでは?と。


 ・・・ともかくも。


 今季のラグビー日本選手権は,「節目」としてどうしても獲りたい,と願うクラブが多いのは間違いなく,それだけに準決勝は激しいゲームになりそうです。
 恐らく,ロー・スコアのゲームかな?と思っているのですが,スコアではない部分で選手の持っているモチベーションの高さであったり,スキルの高さを感じることのできるゲームになってくれるのではないか,と期待しています。