関東学院大学対ヤマハ発動機ジュビロ戦(日本選手権2回戦)。

前半終了間際,FWを主戦兵器にしながら,ジュビロがトライを強引に奪いに行った場面を見て,関東学院がアップセットをモノにする可能性は相当に薄いものになったな,と感じました。


 ジュビロサイドから見れば,後半は有利な風上サイドからの攻撃になります。


 ラッシュを掛けるには絶好の条件ですし,風下で守勢を強いられながらも,結果として2点差に収めた,というのは関東学院が置かれた立場が相当に危ういものである,ということの裏返しだったように思うのです。


 ・・・それにしても。


 “ジュビロ”と書くと,どうしても「磐田」と自動的に結び付いてしまうだけに,ちょっとおかしな感じがします。秩父宮のバックスタンド,真ん中からちょっと青山通りサイドに寄ったあたりに陣取っていたヤマハの応援団さんが持っていたフラッグも,ジュビロというロゴではなくて,音叉マークと“YAMAHA”というロゴが目立っていましたし,“ハイ・アマチュア”ではあっても地域との関係が確立されたクラブ,ましてや当然プロフェッショナルというわけではないな,ということを再確認したような思いがしました。


 ということで,秩父宮での第2ゲームであります。


 第1ゲームのヴォルテクスヴェルブリッツ戦よりは,風の影響は少なくなっていたようにも思うのですが,時折強い風が神宮球場方向から吹き抜けているために,風をどう味方に付けるのか(=どれだけ風の影響を最低限に止めるのか)という部分がゲーム戦略の鍵を握っていたように思います。


 そして,関東学院は風を巧みに味方に付けながら2トライ2コンバージョンを奪うわけですが,このときの攻撃は「関東学院」の持ち味をシッカリと表現するものだったように思います。
 BKが持っているスピードを最大限に引き出し,ボールを積極的に展開していくことでジュビロにディフェンスのポイントをつくらせることなく,攻撃を組み立てていく。そんなアイディアがリードとして結び付いたな,とは思います。ただ,そのリードを守りきれなかった。ひとつには,前半で畳み込むような攻撃を仕掛けられなかったという部分もあるでしょうし,ひとつにはジュビロのプレッシャーによるダメージが前半の段階から出ていたようにも見えるのです。


 そして,後半は完全にジュビロにゲームを掌握されることになる。


 ボールを展開させるスピード自体が落ちているわけではないのだろうけれど,そもそもBKに良い形でボールを供給することができない。接点での攻防で,どうしてもトップリーグ・レベルのプレッシャーにさらされているためか,ボール・コントロールを失う傾向が強くなっているように見えたのです。
 それだけでなく,風下サイドに立っていることで,BKがキックに対応する時間帯を利用され,攻撃の起点を自陣深い位置に構築される,そこからシークエンスとしてのボール展開を繰り返されることで,完全にディフェンスが振り回されることになる。ファースト・ディフェンスに緩さを見せてしまうと,ブレイクダウンでも主導権を奪い返すことができず,結果としてディフェンス・ラインに枚数が整わない状態から縦への突破を許し,トライへと結び付けられてしまうことになる。


 ・・・大学ラグビーにも頑張ってほしい,と思っているだけに,関東学院サイドからの目線になってしまうことはご容赦願いたいのですが。


 結果的に見れば,「圧倒的な実力差」が大学チームとトップリーグ勢との間にあると言うこともできるように思うのですが,実際には「埋められる差を埋めていないことによって発生している実力差」も相当程度あるような感じがします。
 恐らく,コンタクトの激しさのような部分は,トップリーグのような条件にはない大学リーグ戦ではなかなか意識付しきれない部分もあるかも知れません。ただ,今回のゲームは大きな動機付けになるはずです。「大学レベルでは通用しても,選手権レベルではまだ足りない」。トレーニング・メニューの段階で大学レベルを超えた水準を設定することで,今回明確になった差を縮めていくことはできるのではないか。そんな感じがします。


 そして,埋められるはずの部分は,戦術的な部分に求められるように思います。


 自分たちのスタイルを貫き通すという部分と,相手の強みを徹底して消し去りにかかるという部分でのバランスのあり方です。このゲームで,関東学院は短い時間帯に限定されはしたものの,自分たちの持っているラグビー・スタイルを表現することに成功しています。この収穫をもとに,次は「相手の良さをどう消し去りにかかるか」という部分にも,ちょっとだけ意識を振り向けてほしい。相手の戦い方を明確にイメージするなかから,相手が持っている隙を明確なものとしていく。そして,その隙をチームとして突いていくことを徹底する。そういう部分にも,意識が振り向けられても良い。


 関東学院が持っていたテンビン,その皿の上には大学リーグ戦と大学選手権に向けた分銅は用意されていたものの,日本選手権をどう戦っていくか,という部分に関する分銅までは用意されていなかった,ように少なくとも映る。
 用意されていなかったと仮定するならば,日本選手権に向けた分銅を用意することで,チームはどのような進化の方向性を見出し,強さを増していくのか。そんな部分も興味深い。


 アップセットは成立しなかったものの,一定程度の可能性を感じさせる敗戦だった,という評価をしてもいいような感じがします。