桐蔭学園対正智深谷戦(高校ラグビーQF)など。

やはり,埼玉県代表のことは気になるものであります。


 また,関東勢がSF以上に進出してほしいとも同時に思っていますから,こういう「つぶし合い」はトーナメントのアヤですからどうしようもないのですが,できれば避けたかったですね。
 ということで,積み残しにしてしまったゲームを含めて,埼玉県代表から高校ラグビーを見てみようと思います。


 さて,正智深谷の戦いぶりを見ますと。


 組織的な部分でちょっと不安定な部分がありましたから,個と組織がシッカリと高みでバランスしているチームを相手にしてしまうと難しいかな?という感じがありました。
 表面的に見れば,クロース・ゲームをモノにしてきているのですから,評価していいような気もします。ただ,組織的なディフェンスであるとか,攻撃時における連携などがちょっと個の持っているパフォーマンスであったりポテンシャルに偏っているような感じがつきまとっていました。もうちょっとひとりひとりの役割が整理できれば,もっとパフォーマンスを安定して引き出せるような感じがするのだけれど,個の力にチームとしての意識が向かってしまっている。
 そのために,ゲームのリズムを対戦相手に掌握されかけると,その流れを押しとどめられずに行ってしまいそうな,ちょっとした危うさがあったわけです。


 このちょっとイヤな流れ,3回戦(対大阪桐蔭戦)でも感じられました。


 ただ,前半だけを取り出してみればゲームのリズムをうまくコントロールできているな,という感じがしました。先制を許しながらも,早い段階でゲームをイーブンへと引き戻し,リードを保ったままハーフタイムへと入る。
 後半立ち上がりは,その良いリズムに乗って大阪桐蔭との得点差を広げにかかるかな,と思ったのですが,ゲーム終了間際の時間帯に突き放すまでは,かなり相手のラッシュを受け止めなければならない時間帯が多かった。そんな流れを見ているだけに,QFのカードである桐蔭学園戦も相当シビアになるだろうな,と感じていたわけです。


 チームが持っているポテンシャル,という意味では,恐らくQFあたりにまで上がってくるチームはそれほど大きな差異はないだろう,と感じます。
 ただ,そのチームが持っているポテンシャルを100%近く引き出せるだけのパッケージを組み上げているのか?と考えると,残念ながら相当なバラツキがあるような感じがします。
 この点で,正智深谷はひとりひとりのプレイヤーが持っているパフォーマンスをうまく引き出せていないような感じが強い。確かに,強烈なパフォーマンスを持っているプレイヤーはいるけれど,そのプレイヤーは相手にとっては「マークを外してはならないキー・プレイヤー」です。そして,この強烈なプレイヤーに対する依存度が高ければ,このプレイヤーを封じることは,チームとしての攻撃自体を封じることとほぼ同じことになる。


 それでも,後半15分あたりまではほぼイーブンの展開でした。ある意味,スタイルの違うチームがぶつかりながら,スコアは似たような動きをする。その不思議な均衡が崩れたのが,後半20分以降の時間帯です。


 ・・・ディフェンス,というと,特にラグビーフットボールでは接点での強さが強調されるような感じがします。言うまでもなく,ボール・ホルダーに対してタックルに入り,ボールの動きを止めることは確かに重要であります。
 ただし,相手ボール・ホルダーを止めやすい位置にポジショニングしておくことも重要ですし,ひとりで止めきれないケースを考えれば,極力早い時間帯で数的優位を構築しながらディフェンスを展開していかないと,ボール奪取までを視野に入れたディフェンスは展開できません。この部分で,正智よりも桐蔭の方が組織的に守備を展開していた印象があります。


 アソシエーション・フットボールでも同じですが,守備は「専守防衛」を意味するものではないはずです。良い形でボールを奪取し,相手の陣形が整わないタイミングで素早く攻撃を仕掛け,できるだけ多く決定的な形を多く作っていく。その前提のはずです。
 いわゆる「僅差」のゲームにあって,勝者と敗者を分けてしまう要素のひとつには,どれだけ組織的な守備を展開し,攻撃の起点を作るか,という意識が徹底されているのか,という部分があるような気がします。