BTOなアプローチ。

Jリーグのオフィシャルには,Jクラブのマネジメント・データ(リンクはトップページ)が掲載されていて,イロイロなものが見えてきます。



 たとえば,営業収入であったり,経常利益であったり。



 これらは,フィナンシャルな部分からクラブの状況を見るものですから直接的に比較することも問題ないのではないか,という見方も確かにあります。努力目標として,あるクラブが(となれば,恐らく最大の営業収入を出している浦和,ってことになるでしょうけど。)達成した数字を意識することは悪くない。そういう見方は確かにできます。

 ですが,本当に重要視すべきは同じ数字でも「入場料収入」であり,その前提となるものではないでしょうか。



 そこで,ひさびさにクラブ論的なことを書いていこうと思います。



 リーグ戦最終盤を迎えるにあたり,浦和は“ALL COME TOGETHER!”というキャンペーンを展開していました。表面的に見れば,観客動員数を引き上げる(=当然,直接的に営業収入にポジティブな影響を与える)ためのプロモーションであります。

 リアリスティックな言い方をすれば,観客動員数が大きいということがあらゆる面でポジティブに働きます。たとえば,パートナーシップを締結するにしてもスタジアム内部での露出度が高くなることを意味しますから,契約金額も当然高くなっていくし,サプライヤー契約にしても,マーチャンダイジングの基盤が大きいということを意味しますから,契約内容もそういう部分を加味したものになっていく。そういう部分から考えても,観客動員数は重い数字です。

 しかし,藤口社長の意識は「数字」の部分にだけ向けられているわけではなかったようです。“TOGETHER”という単語には,浦和の街と共に歩んでいくことこそが浦和レッズの最大の基盤なのだ,というメッセージが込められているのだとか。



 では,入場料収入をそれほど上げてはいないクラブのことを考えてみますと。



 関係ないことを言うようですが,「自分たちのクラブ」という意識を持ってもらえるようなクラブ戦略を立案してきていたのでしょうか。クラブによっては,ファースト・チームが持っている「強さ」だけをクラブとしての武器にしようとしてはいなかったかな?と思うところがあるのです。



 もちろん,プロフェッショナル・フットボールクラブにとって,「結果」は非常に重要な要素ですし,結果を引き出すために最大限の努力を払うべきだとは思います。その意味で,ファースト・チームの強さを求めるのは当然のこととも言えます。

 ですが,それだけがクラブの存立基盤か,と問われれば,「違うでしょう」と答えたいのです。



 どんなに大きな街をホームタウンとしていようと,逆に小さな街だろうと「自分たちの誇りさ!」と,実際に住んでいるひとたちに言ってもらえるクラブであり続けることこそ,最も重要なことなのではないか。それこそ,この点においてはビッグクラブもなければプロビンチアもないし,トップ・ディビジョンもなければ下部リーグもない。ファースト・チームの持っている強さだけがクラブの命脈を左右するのならば,イングランドにあれだけのプロフェッショナル・クラブがあり,そのクラブひとつひとつにそのクラブを追いかけ続けているひとたちがいる,その理由など説明できないことになってしまう。



 クラブとして,地元(より具体的に言えば,クラブのことを自分のことのように思ってくれるひと)との関係をどのように作っていくのか,という部分では,あらゆるアプローチが考えられるはずです。もともとフットボールに対する理解が深い土地なのか,それともそうではないのか,にはじまり,あらゆる要素が違うのですから,どこかひとつのクラブが採用したアプローチが成功したからと言って,そのままが当てはまるとは思わない。

 ただ言えるのは,「地元のひとと共に歩んでいく」という姿勢は大前提だということ。それは,スタジアムに実際に足を運んでくれるひと(=コアを構成していくだろうひとたち)に限らず,気にとめてくれるひとを含めてのことです。そのことを前提に,その地域に合った,ワンオフのアプローチを見つけ出し,そのアプローチを地道に,確実に続けていくことも大事なのではないか,と思うのです。