ダッチ・ジャーマン・ハイブリッド。

4バック,というと,組織的な約束事を徹底したイメージがありますが。


 浦和のプレー・スタイルを思い起こしてみれば,そういう部分からはちょっと離れた守備イメージですよね。


 ゾーン・ディフェンスの要素も確かに持ってはいるけれど,基本的にはかなりストリクトなマンマーク・ディフェンスを基盤としています。それゆえ,守備応対にどれだけ余裕が持てるのか,という部分が大きな鍵を握っていくことになる。中盤でのファースト・ディフェンス(あるいは,プレッシングという表現でも良いでしょう。)がルーズになったり,ボール・ホルダーをフリーな状況にさせてしまうと,アタッキング・サードで潰しに行くべきプレイヤーが多くなってしまって,ストリクト・マンマークの大きなネガティブをモロに背負ってしまうことになる。「飛び出されて」しまうわけですね。


 であれば,浦和にとって中盤での機能性は相当バイタルだったりするわけです。2004シーズン後半の猛烈なプレッシングのイメージは,恐らく多くのひとに鮮烈に残っていると思いますが,ハーフコート・カウンターを主戦兵器としていないいまのスタイルにあっても,中盤でのプレッシングの掛かりかたは浦和のコンディションを大きく左右しかねないものだと思っています。


 ともかくも。4バックよりは3バックのイメージの方が強くなりがちであります。


 守備面だけを考えれば,いわゆるジャーマン・スタイルを想像させるところがあるな,と。そういう先入観があったおかげで,後半立ち上がりの布陣にはビックリしたわけです。


 ただ,攻撃面にフォーカスして考えてみると,4バックを採用する意味は確かにあるな,と思ったりするのです。ワシントン選手というタレントを活かす手段としては,1トップという選択肢も十分にアリだと思います。ですが,ワシントン選手がいない状況で同じように1トップを堅持する理由があるのか,と考えると,そうでもないように思います。ウィンガー・スタイルと浦和のタレントとの親和性が高いのではないか,と思っているのです。


 センターに圧倒的なタレントがなければ,”トライデント”という方向性をチーム全体として徹底してしまえばいい。サイドが主導権を掌握しながら,中央とシッカリと連携していくことで攻撃を組み立てる。そのために,SBとウィンガーが“ダブル・アウトサイド”のような関係性になり,積極的に縦方向のポジション・チェンジを仕掛ける。また,センター・ハーフは“フリーマン”として機能させ,中盤でのリズムにアクセントを付ける。当然,横方向でのポジション・チェンジを促す役割も持たせる。一方で,ディフェンシブ・ハーフのコンビネーションは最終ラインとの関係性を重視して動かさない。


 これを数字に当てはめていくと,“4−3−3”。ナショナル・システムとまで言われるオランダ代表の布陣でありますな。ダッチ・スタイルというわけです。


 …で,この2つの要素を合わせ持っているように見えるから,“ダッチ・ジャーマン・ハイブリッド”と。書いておいて言うのもナンですが,ひねりも何もないわけですけど。


 再びともかくも。実際,ここまでの戦術的な意図をもって小野選手を投入したのかどうかは想像する以外ないのですが,結果としてピッチに表現されたシステムは,浦和にとっても案外意味のあるものだったのではないでしょうか。


 これをベースとするのは難しいかも知れない。しかし,ひとつの魅力的なオプションであることは間違いないと思います。煮詰めていく価値はかなり大きいように思うのです。