Penalty Shootout.

緊張感,と言うよりも冷静さが支配していたような印象が強い。


 相手は,間違いなくPKまでを視野に入れたトレーニングをしていたに違いない。ゴールキーパーから見て右サイドに位置するゴール・ポスト,そのポストからちょっと深い位置を狙って強いグラウンダー性のシュートを放つ,という方向性を徹底させていたように思う。


 同じスタイルを徹底してきた相手に対して,自分たちが得意とするコース,角度,そしてリズムをしっかりとコントロールすることで主導権を握った状態でのシュートを意識していただろう浦和。恐らく,PKを見つめ,時に祈っている人間以上に冷静だったのは,ペナルティ・スポットに立っていた10人のプレイヤーだったのではないか。


 …磐田のアプローチは本当に徹底していたな,と思います。


 恐らく,PKに伴うリスクを最低限に抑え込むという意識があったのだろうと感じます。ですが,都築選手はこのスタイルにかなり早い段階で気が付いていたはずです。磐田の選手たちが狙ってきた右サイドへと反応していましたし。


 ただ,ゲーム後のコメント(J's GOAL)からもうかがえるように,このゲームを担当した岡田主審は予備動作に対してかなり明確な注意を与えていたようです。そのためか,フィスティングできるタイミングよりは遅れてしまっていた。抑え込めるコースではあるけれど,タイミングをギリギリにまで切り詰めていけば,リプレイを宣告されかねない。かなり心理的にはキツかっただろうと思います。


 対して,浦和の選手たちはPKに対する徹底されたアプローチというものはなかったようですが,安定していました。何より,相手ゴールキーパーに狙いを絞り込ませないという意味では,かなり大きかったのではないでしょうか。同じコースに,という意識が強くなり過ぎてしまえば,「決めること」という大前提よりも,ボール・コントロールに対する意識が強まってしまう。最後のキッカーは,どこかでコースに対する意識が強くなり過ぎたのではないか。そんな感じがします。


 どうしても,浦和とPKの相性はいいとは言えないような気がしてしまいます。指揮官自身,ゲーム後の記者会見コメント(J's GOAL)で言及しているように,2004シーズンにはPKでヤマザキナビスコカップを国立霞ヶ丘で,そしてマイスター・シャーレ埼玉スタジアム2002で掌中から逃してしまっていますから,実際にペナルティ・スポットに立ち,シュート・コースをイメージしている選手よりもはるかに緊張し,余計なことを考えていたのはほかならぬ自分自身だったかも知れません。


 そんな,過去のネガティブ・イメージを振り払ってくれるようなPK戦を闘い,準決勝へと駒を進めてくれた。そして何より,中野田での2006シーズンを良い形で締めくくってくれた。“fortress”という言葉が,実感を持って響く。そのことを強く意識させるシュートアウトだったように思うのです。