CWCのことなど(その2・決勝戦)。

相手も違うし,場所だって確かに違います。


 でも,スタンフォード・ブリッジでのゲームを,横浜国際で繰り返してしまったような感覚が,どこかにあったりします。あの時も,相手はすごく現実的な戦い方を徹底することで,「勝ち上がる」ことを強く意識していました。その相手に対して,「自分たちのフットボール」を押し切ることを強く意識していたのでしょうか。「バルサらしさ」という意味では確かにしっかりと表現できたのではないか,と感じるところはあります。


 ですが,敢えて極端なことを言いますが,「勝ってナンボ」の試合だったと思うのです。


 “カップ”と名前は付いているし,大会方式もトーナメント的なものへと変更を受けたものの,基本的には“トヨタカップ”時代と同様に一発勝負であります。であるならば,天秤のバランスは自分たちのスタイルを貫くことよりも,ちょっとだけ現実的な方向に重心を傾けても良かったのに,と思うのです。


 対して,インテルナシオナルは現実的な姿勢を貫き通すことで,このゲームを勝ちに行く,という姿勢を明確にしていたような感じがします。


 恐らく,ゲームを通じての数字では,バルサが圧倒的に優位だったことを示しているはずです。支配率にしても,シュート数にしても。そして,この状況を間違いなくゲーム前から織り込んでいたはずです。“ゲームをコントロールすることは恐らく不可能だろう”と。それよりも,相手の攻勢によって決定的な破綻を導かないように守備応対を安定させ,数少ないチャンスをしっかりと生かしていく。


 「魅力的なフットボール」という視点から言えば,決してホメられた話ではないと思うけれど,トロフィーを陥れるという目標を達成するならば,決して間違った方法論ではないはずです。


 ・・・やっぱり,「天秤のバランス」というのは難しい。


 個人的にも,バルサのアプローチには共感するところが多いです。勝負に対する意識を前面に押し出して,「勝つこと」にこだわったゲーム運びをするよりも,高い機能美を感じさせるフットボールを展開しながら勝つ方が良い。それだけの能力を持ったクラブだとも思いますし。ですが,フットボールは,スコアを争う競技である,という大前提があります。技術要素に関する高い完成度が問われるような競技ではなく,明確な「数字」だけが支配する競技です。であれば,その数字を奪うための最短距離が選ばれたとしても,決してその方法論を否定することはできません。確かに「現実的」かも知れませんが,必要以上に結果重視の方法論を軽視しても良い,というものでもない。前にも書いたかと思いますが,どういうレベルのクラブであっても,クラブとして目標としている理想のフットボールと,「結果」を引き出すための現実的な戦略との間で常に揺れ動いているような感じがします。そのバランスを,破綻に陥らない程度に動かしながら,リーグ戦であったり,今回のようなトーナメントに臨むのだろう,と思うのです。


 その点,バルサは天秤のバランスを積極的に動かそうという意識は比較的薄いような感じです。理想のフットボール,という要素を中心にバランスを考えていて,現実的な勝負重視の方向性へとバランスを修正する,ということは滅多にない。


 「美しく勝つ」という方向性は,ダッチ・テイストを濃厚に感じさせるものがありますし,らしいな,とは思います。ある種の理想だとも思っている。だけど同時に,時にバランスを現実的な方向性へと微調整して,勝負強さを見せつける,そんなバルサも見てみたいような気がするのです。