やっぱり、アウェイ・ゴールな入れ替え戦。

純然たるアウトサイダーであっても,“プライド”がぶつかり合っているかのような,後半終了間際〜ロスタイムの時間帯の攻防は思わず見入ってしまうものでありました。


 ですが,福岡にとってラッシュを掛けるべき時間帯はほかにもあったはずです。


 ということで今回は,福岡サイドに立って考えてみます。


 第1戦,あまりにも膠着した展開のゲームになっていたような感じがしましたが,その第1戦において積極的に戦わなければならなかったのは,実際には福岡でした。


 “アウェイ・ゴール”という要素を考えれば,リスクを背負うべきは敵地でのゲームなのです。第2戦,博多の森で見せた迫力を神戸ウィングで示していなければならなかったのです。しかし,実際には守備を安定させて「失点を許さないこと」という意識を強く持っていただろう神戸のゲーム・プランに乗ってしまう。第1戦で「アウェイ・ゴール」というカードを手にできなかった時点で,重要なカードを1枚,神戸サイドへと差し出してしまったことになる。


 第2戦での「先制点」というカードです。


 そして,神戸はそのカードを有効に使ってきた,かと言えば。


 先制点を奪取した時点では,そう言えるのかも知れません。ですが実際には,「いつの間にかカードの効力が発生していた」というような感じだったように見えます。やはり,と言うか当然のように,と言うか,神戸が先制点を奪取してからの動きはあまりに硬かった。心理的にむしろ追いつめられたような感じさえします。恐らく,カードを使っている意識はなかったかも知れません。逆に,福岡は吹っ切れたようなアタックを繰り返していく。同点に追いついたプレーも「ねじ伏せる」という形容ができるようなプレーでしたし,追加点を奪うべく仕掛けていった攻撃も本当の迫力を持っていた。時間的に追いつめられていますから,パス・ワークで相手を崩すというようなスタイルは取りようもない。だからと言って,単純にロングレンジ・パスを前線に当て,そこにミッドフィールドから飛び込んでいくような,“キック・アンド・ラッシュ”に頼るのではなく,アウトサイドを有効に使いながら,センターでの分厚さを利用する,しっかりとした攻撃を組み立てているな,という感じがしました。それでも,最終的なフィニッシュの局面で微妙なズレを生じてしまう。キーパーの左サイドを抜くようなシュートを放ちはするものの,ポストをかすめるかのように逸れていってしまう。


 ここまでの攻撃を仕掛けることができながら,結果を引き出せなかったのは残念と言う以外にないと思います。ですが,2006シーズンを通じての福岡の印象も,どこか今日のゲームの印象と相似形を描いているようにも思えます。


 守備的な安定性がないわけじゃあない。でも,攻撃がどこか微妙にかみ合わない。何と言いますか,敗戦が多い,という印象以上に「勝ちきれない」ゲームが多いという印象が強かったような感じがします。そして,「勝ちきれない」ことが降格という現実を突き付けてしまった。アウトサイダーとしては,そんな感じがしています。


 “アウェイ・ゴール”というレギュレーションは,間違いなくフットボールという競技が持っている「勝負」の側面を強く引き出すものです。


 ホーム・アドバンテージを存分に活かしながら攻撃的に行くよりも,ホームでは何があっても失点することなく,アウェイではリスクを積極的に背負いながらでも得点を狙いに行く。かりに敗戦という結果があろうとも,乱打戦に持ち込めばいい。そんなリアリスティックな視点を持っていないと乗り切れない。


 入れ替え戦はそもそもシビアなものですが,「アウェイ・ゴール」がそのシビアさをより強調した。それだけに,歓喜と落胆のコントラストは(残酷なまでに,と付け加えるべきかも知れませんが。)より明確なものになった。そう感じられるのです。