札幌対新潟戦(天皇杯5回戦・短信)。

ノックダウン・スタイルのトーナメントでありますから,PK戦に持ち込まれることも十分にあり得るわけですが。


 双方合わせて16人のプレイヤーがシュートアウトに出てくる,というのはアウトサイダーとしても緊張する展開ですな。一歩も引かない展開,と言いますか。となると,プレッシャーに負けてミスを犯すか,それともGKが抑え込むか。なんてことを考えていると・・・,ですからね。


 ただ,札幌にしてみれば,本来レギュラー・タイムで獲得できたはずの立場を8人のプレイヤー,そしてゴーリーを費やして取り戻した,という感じもあるのかな,と思います。


 特に,2−2というスコアを作り出してしまったプレーは,“アンフォースト・エラー”と言われても仕方ないところがあります。新潟の前線は明らかにGKのミスを「狙って」いました。その狙いに合わせるかのように,ホールドしていたボールをグラウンディングしてしまう。一瞬ルーズになったボールに詰め,迷うことなくシュートを放つ。そのちょっと前,絶好機をクロスバーに阻まれ,恐らくボールの直径ほどはないでしょう,ゴールラインを割れずに終わったプレーがあったのですが,流れの悪さを象徴するかのような失点劇に見えたのは確かです。


 ですが,彼らは決して集中を途切れさせることはありませんでしたし,運動量が決定的に低下することもなかった。そのためでしょう,ゲームのリズムを巧く維持しているように見えました。


 そして,延長戦にあってもチームのダイナミズムが大きく減退することもなかった。もちろん,決定的なチャンスを逃してもいたから,リズムが悪くなるかとも思ったけれど,しっかりと乗り切ってみせた。そして,本当に最後の局面で,GK・佐藤選手は自分のエラーを取り戻すセーブをみせ,直後ゲーム終了を告げるホイッスルが響く。リズムを掌握している時間帯も長かったけれど,同時に「耐える」要素も強かったようなゲームだったかな,と思います。その意味で,所属するディビジョンは違っていますから“アップセット”と言えば言えるのかも知れないけれど,得られた結果は「妥当なもの」と言えるように感じます。


 逆に新潟から見れば,先制してゲームの主導権を掌握したかに感じられたのだけれど,同点に追いつかれてハーフタイムを迎えるというのは,完全に予想外の展開だっただろう,と思います。また,アウトサイドでの主導権を握られてしまって,トライデントの両翼をしっかりと自陣へと抑え込まれている時間帯が長かったこと,それと同時に,プレッシングがしっかりと掛かっているような印象があったセンターを相手はしっかりとバイパスし,早い段階で前線へとパスを繰り出し,運動量によって前線をサポートするという形に対して自分たちのリズムを出し切れないような部分があったな,という感じがあります。


 とは言え,札幌の攻撃を受け止めてから繰り出されるカウンター・アタックは鋭さを持っていましたし,得点を具体的にイメージさせるような攻撃だったとも同時に感じます。


 ・・・さて,唯一5回戦へと勝ち上がってきたディビジョン2勢でありますが,QFへと駒を進めたわけであります。


 彼らが当たるのは,川崎を堂々と退けてきた甲府。“ユアテック七北田公園)”という開催地はフクダ電子アリーナに続いて「何だかなあ・・・」な感じではありますが,最後になって“リアリスティック”な戦いへと本気でシフトしたような感じがある柳下さんと,どこが相手だろうと攻撃的な姿勢を変化させることのない大木さんという,監督さんの個性という部分から見ても面白いゲームになるのではないか,と期待しております。