もうひとつの“ジャパン・オリジナル”。

どこか,イビツァさんが日本代表監督に就任したときのコメントと似たものを感じます。


 ひさびさに,楕円球方面のエントリを書いていこうか,と。


 ラグビー日本代表(ジャパン)のヘッドコーチに,かつてNECに在籍し,2002シーズンから2005シーズンまで6ネイションズの構成国であるイタリア代表の監督を務めたジョン・カーワンさんが就任する方向性である,というニュースリリース(JRFUオフィシャル)が出されています。
 確かに,ラグビー・ワールドカップアジア地区最終予選に向けたリード・タイムはあまりに短いですから,チーム・アドバイザーとして帯同するという形をとったのでしょうが,サンスポさんのインタビュー記事を読む限り,カーワンさんは本気で日本のラグビーフットボールに対してコミットするつもりだな,ということが感じられます。それは,

 「日本ラグビーの特性を生かすために、まず6カ月でチームスタイルを確立したい。そのために、12月からトップリーグを視察する。来年1、2、3月も日本で試合をみていく。それが私の仕事だから・・・中略・・・(RWC2勝は)非常に難しい目標だとはわかっているが、めざすべき目標だ。日本はもっと強くなれる」


という言葉から,ハッキリと受け取れるように思うのです。


 ラグビーフットボールこそ“ジャパン・オリジナル”が厳しく求められる競技だと言って良いような気がします。


 ラグビー・ネイションが使っているスタイルをそのまま移植するようなことがあれば,フィジカルという部分からどうしても生じてしまうクラックを決定的なところにまで広げられかねない。となれば,相手のパワーを真正面から受け止めるのではなく,俊敏性や一瞬の加速を存分に生かしながらボールを徹底的に早く動かしていく。そのために,チーム全体がどのように機能するべきなのか,を徹底して意識するのが出発点かな?と思うわけです。相手の武器を利用して真正面から勝負を挑むのではなく,自分たちが持っている,そして当然相手にはなかなか真似できない部分をブラッシュ・アップすることで勝負を挑んでいこうというアプローチを表明してくれたことは,うれしい限りです。


 もちろん前任指揮官の基本アイディアも,そういうロジック・フローの中にあったのだろうとは思うのですが,実際にその基本アイディアを戦術に落とし込むところに大きな問題を抱えたように見えます。
 また,しっかりとしたスカウティングに基づくセレクションだったのか,という不信感は非常に大きかったようにも思います。TVを通しても,ある程度の印象はつかめるかも知れないけれど,前任指揮官のアイディアを支えるものを端的に言ってしまえば,“オフ・ザ・ボールでどういう動き方をして,ボールを呼び込めるか”という部分にあるように感じます。しかし,TVは基本的に俯瞰のアングルを維持はしているけれど,ボールを追いかける傾向が強いために,オフ・ザ・ボールでのプレーをしっかりとチェックするには不十分な面があることも否定できません。それゆえ,実際にスタジアムでひとりひとりのプレイヤーを見ていかないとホントのところはなかなか理解できないように思うのです。


 いずれにせよ。


 日本の持っている可能性を信じて,決してRWC本戦に向けたリード・タイムが多くはないこの時期に就任要請を快諾してくれた。そして,ニュージーランド・スタイルでもなければフレンチ・スタイルでもなく,ジャパン・オリジナルともいうべきラグビーフットボールを作り上げていく,という目標を掲げてくれた。
 確かに結果だけが求められるのが「代表」という存在だろうけれど,揺らぐことのない土台であったり,ジャパンが拠って立つべき(戻るべき)場所をしっかりと構築してほしい。そう思うわけです。