リザーブ・リーグか、JFLか。

そもそもの問題は,サテライト・リーグの短さです。


 8ゲームで,十分な実戦経験が積めるはずもない。


 そこで,加部さんはJFLの活用というアイディアを思いついた。ならば,もうひとつの考え方として,サテライト・リーグをもっと充実させた形にできないものか。イングランドでいう,“リザーブ・リーグ”のように。


 ということで,先のエントリに続けて書いていきますと。


 結論から言えば,「実質的には,将来性ある選手に対して実戦経験を積む場所を提供するという機能は同じ」ということになりそうです。ただ,チームの位置付けが大きく異なるわけです。


 JFLを活用しようというアイディアの源泉にあるのは,ブンデス・リーガの下位に位置し,3部リーグに相当するレギオナル・リーガでしょう。実際,バイエルン・ミュンヘンカイザースラウテルン,VfBシュツットガルトのようなトップ・ディビジョンを主戦場としているクラブはアマチュア・チームを組織し,レギオナル・リーガに参戦しています。ジェフ・クラブが意識したのは,このレギオナル・リーガではないか,と思うわけです。また,リーガ・エスパニョーラプリメーラ・ディビジョン)の下位に位置する(3部リーグに相当)セグンダディビシオンBもレギオナル・リーガと同様の機能を持つアマチュア・リーグです。プロフェッショナルはプリメーラ・ディビジョンとセグンダディビシオンに限定されている,というのは,ある意味で日本のリーグ形態に重なる部分があるかも知れません。スペインのケースを見ると,スペイン全域を4つの地域に分け,各地域では20チームが2回戦総当たり制のリーグ戦を戦うことになっています。つまり,38ゲームあるということです。8月最終週に開幕を迎えると,最終節は5月。ほぼ,スケジュールはトップ・ディビジョンと変わらないわけです。


 もうひとつ,プロフェッショナルはプロフェッショナルだけでリーグ戦を戦う,というのがイングランドのアイディアではないでしょうか。イングランドでは,プレミアシップに参戦している20のクラブを南北10クラブずつに分割し,“リザーブ・リーグ”を組織します。10チームが2回戦総当たり制のリーグを戦うわけですから,基本的に18ゲーム。これに,下部リーグに所属するクラブ,そのリザーブ・チームと対戦するフレンドリーが数ゲーム組まれるケースもありますから,基本的に20ゲーム前後をこなすことになるのです。


 これらのことを見てきたうえで日本のリーグ形態や,強化のあり方などを考えると,昇格についての制限をかけながらアマチュア組織の参戦を認める,というレギオナル・リーガの考え方をJFLに巧く落とし込んでいくのが,いい方向性ではないか,と思います。


 理想論を言えば,Jリーグに加盟するすべてのクラブを東西に分割して,リザーブ・リーグを組織するというのが最も良いあり方かも知れません。ですが,クラブの経営体力はそれぞれに異なり,2つのチームを実戦体制で維持することが困難なケースもあります。一気に横並びにするには難しい条件があるようにも思うのです。Jリーグ全体が継続的な強化のために何ができるのか,という部分からサテライトを考えることも重要ですし,将来的にはJリーグ加盟クラブによるリザーブ・リーグが並行して動いているべきだとは思います。


 ですが,クラブが「いま」何ができるのか,ということも大事でしょう。


 サテライトが,ファースト・チームとの連続性を感じることも難しく,さりとてユース・チームとの有機的な連携も感じにくい現在,クラブの継続的な強化を考えるならば,最も重点的に考えなければならないポイントがサテライト,とも言えるように思います。クラブの個性に応じて,ファースト・チームとの連携を強めたリザーブ・チームを作り上げるのか,それともアカデミー(ユース,ジュニア・ユースなどの下部組織)との連続性を強く意識させるチーム編成とするのかは柔軟に選択されていい。「浦和B」というアイディア,本格的な強化体制をクラブ・レベルで用意するためにも,浦和だけで片付けてはならない話かな,と思います。