対福岡戦(06−27)。

本来ならば,存分に表現できていて良いはずのフットボール・スタイルを見ることのできる時間帯もあったけれど,その時間帯が今節にあってはあまりに短かった。


 立ち上がりは,慎重さを意識していたのか,パス・ワークからリズムを作り出し,相手守備ブロックにクラックを生み出そうとする仕掛けではなく,ロングレンジ・パスを比較的多く繰り出しながら,攻撃を組み立てようとする,どこか「カップ戦」の戦いを見ているような感じがあった。
 当然,相手がミッドフィールドでの攻防を避け,前線へとシンプルにロングレンジ・パスを繰り出すというゲーム・プランを意識していたことも作用しているだろうし,リーグ・テーブル上位に付けているクラブが土曜日にすでにゲームを消化しているという状況にあって,「慎重さ」を強く意識する条件がそろっていたとは感じる。


 それでも,ある意味で相手の出方に合わせてしまった立ち上がりであったような印象がある。


 相手の展開するフットボール・スタイルを真正面から受け止めてしまっているかのようなパッシブな流れを,セットプレーからの先制点奪取によって,断ち切ることに成功する。


 相手ボール・ホルダーからボールを奪取すると,周囲が連動して動きはじめる。ショートレンジ〜ミドルレンジ・パスをシンプルにつないでいくことで,攻撃を組み立てていく。前節までの1トップ2シャドー,という形から2トップ+トレクワトリスタ,という攻撃ユニットへと変更を受けてはいるけれど,ディフェンシブ・ハーフやアウトサイド,最終ラインとのコンビネーションは安定性を維持し,流動性を持った攻撃がピッチに表現される。ただ,最も重要な“フィニッシュ”へと直結しない。
 ゲームを決定付けるタイミングを多くつくり出しながら,実際にはそのタイミングを逸してしまう。


 後半開始直後,大きな意味を持つ追加点をシンプルな仕掛けの中から奪うことに成功するものの,その後の流れはむしろ,シンプルな仕掛けから生み出される「自分たちのリズム」と言うよりも,相手のリズムを断ち切ろうとしながら,実際にはそのリズムに乗せられてしまっているようなものだったように思う。
 中盤のバランスが崩れ,相手が積極的に前線へと飛び出せる条件をつくり出してしまうことで,最終ラインにかかる負担が相対的に増加してしまう。そのため,さらに中盤が省略され,最終ラインに多くのプレイヤーが並ぶ状況になってしまう。


 結果として,一時は掌握しかけていたはずのリズムを手放し,アディショナル・タイム突入直前の時間帯に失点を喫することになる。


 ・・・とは書きましたが。


 リーグ終盤は,どちらかと言えば「カップ戦的な要素」が強まってくるような感じがします。ミスを決定的なものへと広げてしまったクラブは,恐らく維持していたポジションを失うことになる。そういう部分から考えれば,「結果」を優先するアプローチが全面的に間違っているとは思わない。立ち上がりの慎重さを「カップ戦」のようだ,と表現しましたが,それだけチームはひとつひとつのゲームが重みを増しつつある,ということを意識し,真正面からその重圧に対峙しているというように理解すれば,チームが勝負強くなっているとも見えるわけです。


 何よりも,昨季は重要性を持ったゲームで勝ちきれなかった。


 このことを思えば,「勝ち切るチカラ」が見えていることは収穫と言って良いはずです。
 終盤戦にあっては,ファースト・プライオリティは「結果」にこそ置かれるべきだと思っていますから,どうあろうと「勝ち点3」を積み重ねていくことは重要な要素です。今節は,そのタスクを達成しているのだから,当然評価されてしかるべきではある。
 ただ,もっと楽にゲームを展開できる余地があったと思うし,その可能性についてしっかりとチェックをしておくことは,「隙」を作らないためにも重要になってくるのではないか。


 単に終盤戦を走り抜けるのではなく,加速態勢を維持しながら駆け抜けたい。しかも,単なる1/34を超えた意味を持つゲームも残っている。不安要素があるのならば,しっかりと除去しておかなければならない。そのためにも,シンプルなことですが,コンビネーションの熟成などをしっかりとしておくべきところだろう,と思うのです。