対千葉戦(06−26)。

“リアクティブ”な姿勢を見せれば,恐らく彼らのゲーム・プランに乗せられたかも知れない。


 どのクラブが相手であろうとも,ゲーム立ち上がりの早い時間帯から自分たちが持っているフットボール・スタイルを前面に押し出し,積極的に仕掛けていくことでリズムを掌握できなければ,必要以上にゲームを難しくしてしまう。


 そういう部分から見れば,立ち上がりからラッシュを掛けたかのような仕掛けは,大きな意味を持っていたように感じる。


 メイン・スタンドから見て左側に位置する導入路方向から風が吹き抜け,ピッチをバック・スタンド方向から回り込みながら包み込むように強風が巻いている。そんなコンディションを考えれば,前半は概ね風上から風下へと攻め下ろすイメージだったように思える。
 風を味方にもつけながら,徹底して仕掛ける姿勢を押し出していくことに成功していたように思う。シンプルにボールを動かし,縦へのプレッシャーを徹底して強めていく。ショートレンジ〜ミドルレンジ・パスだけにこだわるのではなく,ロングレンジ・パスを巧く織り交ぜながら,相手ゴールを脅かす。シンプルに,だが強烈なプレッシャーを相手に掛けていくような攻撃プランが具体的な結果として表現されたのが,今節の得点場面だったように思う。
 また,ファースト・ディフェンスへの入り方に,かなり効果的な修正が掛かったような印象を受けた。相手守備ブロックの状況に応じて,あるいはファースト・ディフェンスに入るポジションに応じて相手ボール・ホルダーのパス・コースを厳しく限定しながら守備ブロックが仕掛けた網へと追い込んでいくようなスタイルのプレッシングと,ボール奪取からショート・カウンターを仕掛けるようなプレッシングとを巧みに使い分け,攻撃リズムにアクセントをつけることに成功していたように思う。


 「戦術的なピクチャー」にフォーカシングのズレがなくなり,チームとして狙うべき方向性がピッチ上でスムーズに表現されるようになってきたように感じる。このことは,「勝ち点3」を奪取できたこと以上に大きな内容面での収穫だろうと思う。


 ただし,ゲーム運びには課題も残ったように思う。


 全般的に見れば,ゲームのリズムをコントロールしていたように思う。ただ,攻撃をフィニッシュへと結び付ける最終的な局面,あるいはフィニッシュへと持ち込める前段階でボール・コントロールを失う状況も見られたように感じる。前半早い段階で数的不利の状況に陥り,自分たちが積極的にビルディング・アップしていくと言うよりもフルコート・カウンターを狙う,というゲーム・プランへと変更を余儀なくされた相手に対して,ある意味では絶好の攻撃の起点を提供することになる。
 厳しい見方になるかも知れないが,決められる時間帯に確実にボールをゴール・マウスに沈めておかないと,必要以上にゲームに緊張感をもたらすことになってしまう。「さらなる高み」を現実に陥れる段階に近付きつつあるいま,作り出したチャンスは間違いなく得点へと結び付けるという,さらなる貪欲さであり,冷徹さをピッチから感じたいと思う。


 ・・・リーグ・テーブルだけを眺めれば,いわゆる「勝ち点6相当」のゲームには見えないかも知れません。


 テーブル上位に付けているクラブとの直接対決ならば,ゲームの持っている重要性がハッキリと見えてきます。リーグ戦は,すべてのゲームが同じ価値を持っているのは当然ですけど,直接対決を制することができれば,ケースによっては「勝ち点6」に相当するような意味を持つことがあるからです。ですが,単なる位置関係からだけでは重要性を導くことはできないものの,やはり大きな意味を持っているゲームというのもあるように感じます。


 今節は,まさしくそんな意味を持ったゲームかな,と思うのであります。


 ディティールは確かに異なっているものの,“ムービング・フットボール”というフットボール・スタイルを標榜しているという点で,案外この2チームは共通する要素を持っているような気が個人的にはしています。
 それゆえに,ゲーム・プランなどの技術的,戦術的な部分よりもゲームの入り方などの「メンタル」に関わる部分で勝負の流れが決まってしまうのかな,と感じるところがあります。今季第11節,フクアリでのアウェイ・マッチはそんな部分が感じられたように思うのです。
 それだけに,今節はどうしても「受けて立つ」ようなスタイルではなく,自分たちから積極的に仕掛けていく必要があるように思えたのです。アグレッシブさを前面に押し出していくことで,流れを引き寄せる。


 リーグ終盤を迎えて,いよいよあらゆる要素がポジティブな循環を始めたのかな,という感じがしますし,少なくともそのきっかけにはなってくれるゲームかな,と思うのであります。