対ガーナ戦(国際親善試合)。
ファイナル・スコアだけを取り出して,単純に結果だけを論じる必要性はないでしょう。
それよりも,前半と比較して明確に仕掛けポイントを押し上げてきていた相手に対して,そのプレッシャーをどう受け止めるのか,そして急激なスピードアップから守備ブロックを切り裂こうとする攻撃に対してどう組織的な守備応対を仕掛けていくのか,という極めて実戦的な課題を提示されたことは大きかったと思っています。
ゲーム立ち上がりから,ビルディング・アップは比較的安定していたように感じますし,攻撃に関して一定以上の可能性を感じてもいます。
しかし,最終的なフィニッシュの局面になると粗削りさを強く感じることが多かった。前半,リズムを掌握していたと思うのだけれど,それだけに“フィニッシュ”へと直結しなかったことが,後半立ち上がりから,ガーナにリズムを切り替えられてしまったファクタになっているような感じがします。
国際親善試合であっても,真剣勝負のAマッチであっても,「自分たちのリズム」でゲームをコントロールできている時間帯に結果を引き出しておかないと,どこかで自分たちからリズムを手放し,一瞬の隙を決定的なクラックへと大きく広げてしまう可能性がある。そんな落とし穴に嵌ったのが,後半の失点場面だったような感じがします。
アジアカップやワールドカップ(大陸予選)で対峙する中東勢は,ここまで明確なギアチェンジを仕掛けてくることはないけれど,ワールドカップ本戦を現実的な視野に収めれば,アフリカ勢の持っているこのようなフィジカルに対して,どのような対処をしていくべきか,そしてそもそもギアチェンジを許さないようなゲームをどう組み立てるべきか,という部分は考えておいて良い。
今日のゲームから導けるだろう課題は,逆に言えばこれ以上に大きなものはないのではないか,とも感じます。
むしろ,失点を喫した後の攻撃スタイルには,これからの発展性を感じることができたような気がします。
ボール・ポゼッションを基盤として,細かいパス・ワークから相手守備ブロックにクラックを生み出し,そのクラックを突くことから攻撃を作り上げていく,という(ある意味,前任指揮官時代から引き継がれている)スタイルと同時に,シンプルに,かつ守備ブロックの隙間を厳しく突くコースを狙った,強い縦パスを前線へ積極的に通そうとするミッドフィールドの姿勢や,ボール・ホルダー自らが積極的にドリブルを仕掛けながら相手守備ブロックのクラックを突き,相手ディフェンスを引き付けながらシュートを放つ,あるいはショートレンジ・パスを繰り出すことでチャンスを作り出す,という形が実戦を通して見えてきていることを評価したいな,と思うのです。
相手守備ブロックを突き崩すにあたり,決定的な正解などありません。
時間帯によっては,キック・アンド・ラッシュに限りなく近い仕掛け方をする方が良いケースもあり,あるいはボール・ホルダーが自らドリブルを仕掛ける中から局面を打開することが効果を生む時間帯もある。「柔軟性」を持って,フィニッシュからの逆算をしていくことが,“インテリジェンス”の中核として本当に求められている要素かな,と思うところがあります。
よく,“戦術的なピクチャー”という表現を使いますが,現指揮官はこの戦術的なピクチャーを連続して変化させていくこと,そしてこのシンクロ・レベルを徹底して引き上げることを意図しているように感じられます。とても難しいタスクだとは思いますが,着実にその意図は伝わりつつあるようにも思うのです。
恐らく,「特効薬」的に機能するものではないでしょう。
その上昇曲線がプログレッシブなものだとするならば,立ち上がりはほとんど変化をしていないかのような印象を受けもするはずです。
ですが,指揮官が要求している“インテリジェンス”,戦術的なピクチャーを連続的に切り替えていけるだけのインテリジェンスを少しずつであるにせよ,実際に表現できるようになってきているように感じられたのが,今日のゲームだったかな,と思うのです。