対清水戦(06−24)。

攻撃面で言えば,ひとりひとりの“カッティヴェリア”が突出した(時に空転している)印象を与えるゲームではなかったか。


 当然,フィニッシュにかかる局面では“1on1”であり,積極的に勝負を仕掛ける姿勢が求められることは言うまでもない。この局面で,“カッティヴェリア”が見えないフットボーラーはいないと思う。
 ただ,カッティヴェリアは“戦術的なイメージがブレていないこと”とセットでなければならない,と同時に思う。


 「自分を最大限に活かすために他者を活かす」という姿勢が,まだ明確に表現されていない。


 例えば,ディフェンシブ・ハーフ,あるいはディフェンダーがボールをコントロールしながらパス・コースが広がるタイミングをつくり出す。そのときに,アウトサイドやオフェンシブ・ハーフ,そして前線がどれだけ一致したイメージを描き,そのイメージの中で自分のパフォーマンスを最大限に引き出すか。
 また,アウトサイドがセンター,あるいはファー・サイドに詰めているプレイヤーがどういうオフ・ザ・ボールの動きをしながらクロスを狙っているのか,どのようなイメージを持っているのか,という部分と,実際にパス・レシーバとなるプレイヤーが持っているイメージが一致していない,という部分でまだ熟成途上という印象を受けた。


 また,守備面をシンプルに表現すれば,「カップ戦」のような印象を持つリーグ戦だったように感じる。


 自分たちが本来持っているフットボール・スタイル(ストロング・ポイント)を徹底して押し出すことで,結果として相手が持っているストロング・ポイントを抑え込むアプローチと言うよりも,相手が持っているストロング・ポイントを徹底して消し去ることを当初から意図したゲーム・プランだったように見える。
 それだけに,攻撃面では積極的にポジション・チェンジを仕掛ける中から主導権を握る,というよりも,キー・パーソンをしっかりと抑え込みながらボール奪取のチャンスを冷静にうかがい,ボール奪取ポイントの高低によって仕掛け方をショート・カウンターのようなスタイル,あるいは最後方からのビルドアップから相手をパス・ワーク,そして攻撃リズムの変化によって崩していく,というアプローチを切り替えていたように思う。
 ただ,相手が積極的にラッシュを掛けてくる時間帯を迎えると,そのラッシュを真正面から受け止めてしまっているところが気になる。中盤,特にアウトサイドがディフェンシブ・ハーフやオフェンシブ・ハーフと連携を取りながらしっかりとバッファの役割を果たし,守備ブロックが余裕を持って守備応対に入れるだけの時間を作り出したいのだが,相手の圧力が高まってくると,プレッシングのポイント,強度が不安定さを露呈してしまい,最終ラインの守備負担が相対的に高まってしまう,という悪癖が顔を出していたように思う。


 今節においても,内容面を考えればリアリスティックに勝ち点3を奪取できたことが最大の収穫,と言うべきゲームであるようには感じられるが,ただそれだけではない,いままでの悪い流れを断ち切る,何らかのヒントが見出せたゲームでもあるように思う。


 最初に書いたように,まだ「戦術的なピクチャー」に微妙なズレを生じる時間帯が多いような気もしますし,不安定性を見せながらも「勝ち点3」を奪取するという,中断期間明け以降,標準仕様と化しつつあるゲームの流れにも思えますが。


 ただ,単純にネガティブなイメージが振り解けない,「勝ち点3」だけが最大の収穫だったゲームだとは思いません。むしろ,熟成の方向性が明確になる「きっかけ」となるゲームではなかったか,と思うわけです。ちょっとそんな部分を。


 確かに最終ラインからのビルドアップ,という基本的な戦術イメージは変わらないものの,中盤がプレッシングのスタイルを柔軟に変化させられる,その可能性のようなものを感じられる時間帯があった,ということは間違いなく内容面での収穫であるような感じがするのです。
 相手守備ブロックが安定している時間帯では,プレッシングを仕掛けるとしてもパス・コースを厳しく規制するようなプレッシングを仕掛け,逆に相手守備ブロックにクラックが生まれているような時間帯では,ハーフコート・カウンターをベースにしていた時期と同じように,ボール奪取までを意識したプレッシングを仕掛けていく。


 そのためにどうしてもバイタルとなるのが,前線からの連動したプレッシングになるのです。


 2004シーズンからのチームを俯瞰すれば,ハーフコート・カウンターからリトリートを基盤としたビルドアップへとチーム・スタイルを変化させてきているわけですが,今季はプレッシングのイメージ,その先にある攻撃イメージが熟成し切れていないような印象があり,そのネガティブが表面化したのが8月以降の連戦だったような気がします。
 そのネガティブをすでに選手たちが共有しているだろうことはMDPに掲載されている小齊さんのコラムからもうかがえるところですし,時間帯限定であるにせよ,課題克服に向けたヒント,あるいはきっかけのようなものがピッチに表現されたようにも感じます。


 とは言え,理想的な形かな?と思える時間帯がちょっと短く,どうその時間帯を長くしていくのか,という問題はなかなか解決が難しい部分かとも思います。決して楽観できる状況にはないけれど,チームのコンディションは最悪の時期を脱したかな,とちょっと感じています。