相互補完。

ひさびさに読み応えのある“Number”(662号)だな,と。


 個人的に興味をひかれる企画記事が多い(それゆえ,ここでも取り扱っていこうと思っている)のですが,今回はその1回目として,木崎さんの「名参謀がチームを救う。」という記事をもとに書いていこうか,と思います。


 さて,木崎さんはライカールトさんとテンカーテさんのコンビネーションをフィーチャーしていましたが,イングランドびいきとしては違った表現をしたいところです。


 「サー・アレックスが異例とも言える長期政権を実現できている最大の理由とは?」と。


 マンチェスター・ユナイテッドのことを見ているひとならば,即座に解答が引き出せるはずです。その通り。昨季のバルサ同様,“アシスタント・コーチと構成されているチームが強力であり続けた”のです。


 恐らく,サー・アレックスひとりではここまでの長期政権は成立しなかったはずです。かつてファーガソンさんの右腕を務めた方としては,ユース育成にも手腕を発揮したブライアン・キッドさんに現在イングランドを率いているスティーブ・マクラーレンさんが挙げられます。そして現在アシスタントを務めているのは,かつて名古屋グランパスレアル・マドリーを率いた経験を持つカルロス・ケイロスさん。彼らの能力がサー・アレックスを支える大きな要素であったことは間違いないところだと思います。


 逆の見方も十分に成立します。


 アシスタント・コーチを務めたひとたちは,ボスだったファーガソンさんが持っているような個性をコーチに求めようとしなかったからか,マネジャーとしてファースト・チームを率いたときにはなかなか厳しいものがあったことも確かです。それゆえ木崎さんが指摘するように,「組み合わせ方」にはひとつの法則があるのは確かだと,私も感じます。


 サー・アレックスはどちらかと言えば,「勝負師」としての側面を強く持っているマネジャーだと思います。ある種のカリスマ性を持っていると言って良いかも知れません。となれば,存分に勝負に集中できる環境を整備することがアシスタント・コーチには求められることになる。相手のスカウティングにはじまり,自分たちの戦術的洗練を高めていく。実務的な部分を受け持つのが,ケイロスさんやキッドさんの役割ということになるのかな,と。


 さて,視点をイングランドから本来の立脚点へと移してみますと。


 ハンス・オフトさんとビム・ヤンセンさんのコンビネーションもそうですし,いまのギドとゲルトのコンビネーションもそうですが,木崎さんが指摘している図式に当てはまるような感じがします。戦術型のアシスタント・コーチがしっかりと監督を支えることで,パッケージとして機能している。監督ひとりが全方位的に担当するよりも機能的であり,恐らく合目的的だろうとも感じます。
 そして見逃せないのは,浦和が好循環に乗りはじめた時期と,コーチング・スタッフがパッケージとして位置付けられるようになった時期とはほぼ重なっている,ということです。このパッケージというアイディア,何があっても忘れるべきではない,と感じます。


 ひとはそれぞれに,得意分野とそうでもない部分を持っていると思います。恐らく,フットボール・コーチであっても例外ではないでしょう。ならば,自分にとっての不得意分野を得意とする人間をコーチとして呼ぶことで,チームとしてパフォーマンスを最大にできるように意識する。タイトルにも掲げましたが,「相互補完」という視点がコーチング・スタッフの構築にあって自然に考えられるようになると,チームが持つ強さに継続性が見えてくるのではないか,と感じます。