ジョイント・ナンバーワン。

以前はタイトルに掲げたこの言葉,あんまり良いイメージは持っていませんでした。


 恐らく,鈴鹿のカシオ・トライアングルだったり,ターン1への進入のイメージが強すぎるからでしょう。


 ですけど,もうちょっと昔に戻ってウィリアムズ・ホンダ時代を思い起こしてみれば,ちょっと印象は違ったものになります。
 とあるラウンドでのホーム・ストレッチ。チェッカー・フラッグが振り下ろされるタイミングまで,まさしくタイア(サイドウォール)が触れ合わんがばかりのサイド・バイ・サイドの勝負が繰り返される。お互いのプライドが,レース・トラックでぶつかり合っているような印象があり,それでいてプロフェッショナルらしい,ギリギリの勝負を楽しんでいるかのような感じがありました。


 波風を立てないのであれば,単純に“チーム・オーダ”を提示してしまえばいい。


 しかし,そんなことをしては“チャンピオンシップを狙えるパイロット”を同時に抱えている意味がない。
 どこまでチーム・スタッフがパイロットを信頼して勝負を見届けることができるのか,そんな部分も同時に問われるのが,“ジョイント・ナンバーワン”という体制かな,と思うところがあります。


 ながながと書いてきましたが,この関係,都築選手と山岸選手の関係,そして彼らとコーチング・スタッフとの関係にちょっと似ているような感じがワタシにはします。ひとりは,かつて日本代表に選出され,いまでも選出されるべきパフォーマンスを持っている選手であり,そしてもうひとりは実際に日本代表に選出されている選手です。モータースポーツの世界ならば,間違いなく“ジョイント・ナンバーワン”と表現していい体制でしょう。


 とは言え,純然たるアウトサイダー(と言うか,どうしてもバイアスがかかってしまう外野)としては,分かっていても“ジョイント・ナンバーワン”という感じにはなかなかならないのですが。


 ただ,少なくともこうは言えるかな,と。


 お互いが持っている特徴(強みと言い換えても良いでしょうか。)を,自分のものにしようという意識が貪欲に働いているような感じがしますね。
 実際には,実戦でプレーを見られるのは山岸選手だけ,ということになりますが,その山岸選手,どちらかと言えばロビング性の強いキックを蹴り出す傾向が強いように感じているのですが,最近では弾道の低いフィードを意識しているのだろうことがうかがえます。それだけではなく,ここ数節において浦和というクラブを支えている最も重要なピースが,山岸選手という見方さえ成り立つように思います。
 となれば当然,都築選手がスターター・ラインアップに名を連ねる場合には,どこかに山岸選手が持っている特徴を感じさせるプレーを見せるのではないか(もちろん,山岸選手と同じ,あるいはそれ以上のパフォーマンスを見せてくれるのではないか),という想像が成り立つような気がするのです。


 フォーミュラ・ワンの世界では,時に不健全性を露呈してしまう“ジョイント・ナンバーワン”でありますが,いまの浦和においては最も理想的な形で機能しているのではないか,と感じます。それは当然,コーチング・スタッフがフェアな目線をふたりにしっかりと送り,ギリギリの部分でのメンタル・マネージメントを含めた「指先のフィーリング」を意識していなければ維持しきれない関係だろうとは思いますが,裏返してみれば,チームが決して不健全な状態(=チーム内競争が機能不全に陥っている)わけではなく,むしろ健全な競争状態があることを示している,最もわかりやすい例なのかも知れないな,と感じます。


 ・・・とは言いましたが,どうしても好意的なバイアスがかかってしまうワタシとしては,実戦(リーグ戦)の舞台でやはり都築選手も見てみたい,と正直思うのであります。