高円宮杯(グループE・第2日の2)。

1があれば,2もあるということですね。


 と言うよりも,キッチリ2ゲーム見たのに2ゲーム目を放置してしまっては失礼ではないですか。・・・だったら早く書け!という話ではありますが。忘れたころに再び自己紹介しておきますと,実はかなりの遅筆堂です。申し訳ない。


 では,ちょっとスタジアムの雰囲気を書いてみますと。


 第1試合は,どこかプロフェッショナル・リーグの雰囲気を持っていたような感じがします。ユースをサポートしようと集まってきたヴェルディ・サポがバックスタンド,国立スポーツ科学センター側に固まっていましたし,反対サイドには広島観音のサッカー部の皆さんでしょうか,結構な人数が固まっておりました。


 で,広島観音のサポートのやり方,「ちょっと手慣れてるな!」と思ったですね。なかなか巧みにヴェルディ・サポのチャントにかぶせてくるのですから。そんな感じでありましたから,雰囲気も含めてちょっと楽しめたのであります。


 で,2試合目ですけど。


 途端に,ちょっと静かな感じになってしまいました。盛岡商業さんにせよ,旭川実業さんにせよ,いかに3連休中とは言っても首都圏への大きな動員は難しいのだと思います。恐らく,ご父兄の方々や首都圏エリアに住んでおられるOBの方などでしょうか,そんな方々の姿が目立つスタジアムの雰囲気へと変わっていました。とは言え,ひとつひとつのプレーに対する反応はかえって明確になっているような感じがしましたから,それはそれで楽しめたのですけどね。


 ということで,盛岡商業旭川実業戦を書いていきますと。


 リアリスティックな戦い方をしていた盛岡商業を見ていて,やはりカップ戦的な要素が高円宮杯,しかもリーグ戦になっている1次ラウンドでも強いのだな,と実感しました。


 確かに総当たり制のリーグを戦ってはいるのだけれど,実際には2回戦総当たりではなく1回戦総当たりですし,1ゲームあたりの重みが非常に大きい。立ち止まることの許されないカップ戦のような戦い方が必要とされているような感じがします。そして,その条件をクリアしようという意識が高かったのが,盛岡商業であったような感じがします。


 対する旭川実業は,自分たちのスタイルを徹底して押し切ることを強く意識しながらゲームに臨んできたのだろうことがうかがえました。ごく大ざっぱに言えば,確かにリトリートを主体にしているとは受け取れましたが,そこから縦に速い攻撃を仕掛けるのではなく,アウトサイドを積極的に利用しながらビルドアップしていこうという意識が感じられる,ちょっといままでの高校サッカー基準のようなスタイルからは違った方向性を指向していることが感じられます。高校サッカーを制した野洲ほどに野心的(ではあるけれど,良く見れば正統派のフットボールだと思うけど。)ではないけれど,いままでの「強靱なフィジカルに支えられた堅守速攻」の典型例の枠には収まっていない。トーナメント・スタイルが当たり前だった高校サッカーではなかなか見えてこなかったアプローチが見えてきたことは面白いな,と正直思います。


 前半は,そんな基本スタイルの違いがハッキリと感じられた,緊張感がある良いゲームになっていました。ただ,圧力をより強く掛けていたのは間違いなく盛岡商業であり,その圧力を何とか守備ブロック,そしてゴーリーが受け止めていた,という見方が妥当かも知れません。そういう意味では,シンプルな組み立ての中から攻勢をかける盛岡と,その攻撃をギリギリで受け止める旭川という,何とも微妙なバランスの上に成り立っていた緊張感だった,と言うのがより正確でしょうか。


 その前半が終了するか,という時間帯に,盛岡商業は貴重な先制点を奪取するのですが,そこからちょっと流れが変わってきたような感じがします。


 決して旭川実業の展開しているフットボールが悪いわけではないのですが,なかなか盛岡商業の堅い守備ブロックを断ち割ることができない。そんな状況が焦りを生むのでしょう,丁寧にビルドアップしながら加速をしていけば・・・,と思うような局面でも,前線へロングレンジ・パスを当てて,という形へとシフトしていってしまっているような感じがありました。


 盛岡商業の守備ブロックが高めに位置しているのならば,その裏を冷静に突く,という意味でロングレンジ・パスを繰り出すことにも大きな意味があるように思うのですが,案外盛岡の守備ラインはGKとの距離感は保ちながらも低めに構えていましたから,裏を狙うという形がなかなか成立しにくかったような気がします。


 この点,カウンター・アタックを有効に機能させていたのは盛岡サイドだったな,と。まず,基本的なゲーム・プランがカウンターを想定していたということもあるでしょうが,守備ブロックが安定した守備応対を繰り返していたことも大きかったな,と思います。


 高校サッカーというと,どこかで相似形を描いているゲーム・プランを見るような感じがありますが,ディテールにまで目を凝らしてみるとかなりの違いがあるし,その違いがよりハッキリと見えてくるようになってきているようにも思います。「結果」は確かに重要な要素ですが,その結果へと近付く方法はイロイロあっていい。そんなことを旭川のスタイルからは感じられました。


 ・・・なかなか「勝ち点3」という結果に結び付けられず,どこかで焦りもあったでしょうし,2戦終了時でラウンド16への可能性がかなり厳しいものになってしまっていたために,旭川実業の第3戦へのモチベーションを心配していたのですが,その心配はまったくの「大きなお世話」だったようです。彼らは最終戦広島観音を相手にしっかりと結果を出してきます。確かにちょっと「時期に遅れた」感は否めないものの,彼らの展開していたフットボールを思えば,ギアがしっかりと回り出せば結果を導くことができるだろう,と思っていただけに,純然たるアウトサイダーが持つべき感情ではないかも知れないけど,ちょっとホッとした感じもしています。


 対する盛岡ですけど,最終戦は良いようにやられてしまったな,と。彼らのスタイルを思えば,ここまでの大量失点はちょっと想像がつかなかっただけに,正直意外な感じがしました。ただちょっと思うのは,中盤でのボール奪取勝負をあまり挑んでいなかった感じがするので,ちょっとプレッシングに対するイメージがズレを生じると,ヴェルディユースのようにチームとしての圧力が強いチームと対戦すると,守備ブロックにかかっていく負担が相当程度増してしまうのかな?と感じもします。


 ということで,グループEはヴェルディユースが圧倒的な形で1次ラウンドを突破,彼らに続くのが1勝1分け1敗という戦績で盛岡商業がラウンド16へと駒を進めることになりました。


 と,書いてきてはいますが,ホントは,浦和がこのステージに進めていることがイチバンなんですけどね。フットボール・フリークとして,ちょっとユース年代のゲームを見ておきたいと思ったのは確かだけれど,実際に足を運び,クラブ・ユースが活躍しているのを見ると,別の感情も出てきます。


 なかなかブロック・リーグを突き破れないところが惜しいな,と感じてしまいます。それでも,ジワジワと本戦出場権獲得圏内へと歩を進めていたように感じていたので,今季の12位というスタンディング(プリンスリーグ関東)は,ホント,惜しいの一語に尽きます。来季こそは,バイアスかかりまくりの見方ができる環境であることを,と思ったりするのです。