対広島戦(06−23)。

オフ・ザ・ボールでの守備が問われたゲームではなかったか。


 具体的に言えばアウトサイドや前線の縦に速い仕掛けに対してどのような牽制をしていくのか,が今節における課題だったように思う。


 相手は,真正面から中盤でのボール奪取を挑まず,ボール・ホルダーに対してパス・コースを限定,あるいは選択肢自体を大きく限定するようなプレッシングを仕掛けながら最終ラインへと追い込んでいく,というゲーム・プランを持っていたように思う。
 そして,最終ラインからロングレンジ・パスをアウトサイドの背後へと狙い,縦へのスピードを最大限に活かした攻撃を展開しようとする。守備ブロックがアウトサイドへのサポートに入れば,当然のようにセンターでの守備に綻びが生じる。その綻びをFW,あるいは中盤から攻め上がった選手が突く,という戦術イメージを持っていたように感じる。


 この基本的なゲーム・プランに対して,どのような対処をしていくべきか。


 前半は,確かに得点へと攻撃が結実するまでに時間がかかったものの,決して悲観すべきないようではなかったように思う。イニシャル・ポジションを必要以上に意識することなく,選手相互のコンビネーションを基盤とした攻撃を強く意識していたことで,リズムを作り出していたように思う。ディフェンシブ・ハーフコンビは時に最終ラインの選手をスムーズに攻撃へと送り出すために最終ラインのカバーに入り,時に自らが積極的に押し上げることで攻撃に厚みを生み出す。
 ただ,ボールがピッチサイズを最大限に活かす形で展開されなかったことが,アウトサイドをうまく使われてしまったひとつの要素となっているように思う。


 今節においては,攻撃が比較的中央からの突破に集中してしまい,アウトサイドへとボールが展開していく局面が少なかったように思う。最終ライン,あるいはディフェンシブ・ハーフが積極的にアウトサイドの背後を突くようにオーバーラップを仕掛けたとしても,その仕掛けに連動するようなパス・ワークが見られず,むしろ,センターへと絞り込んでいくような形が多く見られた。
 そのため,相手守備ブロックを大きく横方向へと引き出すことができず,ペナルティ・アーク付近での窮屈さを助長してしまったところがあるように受け取れた。


 このような部分を考えると,先制点が左アウトサイドから,しかもディフェンス・ラインから積極的にポジションを崩して攻め上がっていった結果として生まれたというのは,相手守備ブロックがセンター重視していたこと,またアウトサイドは攻撃の起点として意識されていたために,守備意識としては比較的薄かったことなどを考えれば,最も効果的,かつロジカルなものだったように思う。


 決してアプローチが大きく間違っているわけではない,だが得点へと結び付かない嫌な時間帯を振り切ることができたことで,前半を良い形でクローズできるのではないか,と考えていた時間帯,ショート・コーナーからの対応に混乱しているところを相手FWに決められ,1−1でハーフタイムを迎える。


 後半立ち上がりは,“同点に追い付いた”ということがポジティブなイメージになっているだろう,相手の積極的な仕掛けを受け止める,という時間帯が続いてしまう。アウトサイドへの対応を徹底するために,守備ブロックが横方向へと引き延ばされる時間帯が多くなり,攻撃自体もセンターへの意識が強まっていってしまう。


 その流れを断ち切るきっかけになったのが,戦術交代であったように思う。


 戦術交代が行われた65分以降,チームは1トップ2シャドー,あるいはもうちょっとウィング的な陣形を採用するが,前線でのオフ・ザ・ボールでの動きが大きく活性化されたことで,パス・コースが大きく拡がっていく。
 同時に,アウトサイドを意識した攻撃が仕掛けられるようになることで,攻撃リズムが好転していく。そして決勝点は,アウトサイドからの積極的な仕掛けと,その仕掛けに連動してペナルティ・エリア深くへと詰めていたシャドー(ウィング)の嗅覚とがかみ合う形で生み出される。


 ・・・ちょっと長くなってしまいました。


 「難しいゲーム」になってしまった,と言いますか,相手のゲーム・プランにちょっと乗せられすぎたかな,という感じがします。


 坪井選手を含め,うまく左アウトサイドからの積極的なオーバーラップが仕掛けられていたのは,相手の右アウトサイドを低めの位置に押し込めておきたい,という意図もあったはずだと思うのですが,どういうわけか,そのオーバーラップに対する意識が薄かったですよね。あの局面で鋭いパス交換があれば,相手の警戒度は一気に上昇するし,前だけを意識しているわけにはいかないんですけどね。
 加えて,今節はアウトサイドから中央へと絞り込むのが多く,案外早い段階からセンターへと切り込んでいっていたような。ちょっとだけ,意識をアウトサイドにも振り向けられると,今節の広島のように守備ブロックが堅固な相手に対する崩しがスムーズさを増すような感じがします。どうしても,良い形を作りながらもフィニッシュが決まらないと心理的に焦ってしまいますが,どれだけ自分たちのフットボールを押し切れるか,が難しいゲームを作らないためには大事なことかな,と。


 ともかくも。難しい状況にあっても「勝ち点3」を奪取できたことは間違いなく収穫ですし,コンビネーションが戻ってきたというのはチームにとってポジティブです。今節の課題をクリアすることも当然大事ですが,このコンビネーションをシッカリ熟成させていくことも重要だな,と感じます。