求む、クセモノ。

中東遠征(アウェイ2連戦)をボヤッと見ていて,ふと思ったのですが。


 ボールもひとも動くフットボールとか,結構言われておりましたが,それ以前に待っているのは「掟破り」をシレっとできるフットボーラーではなかろうか,と思うのであります。
 TVなどでチラッと見えるトレーニング・メニューからは,ひとりひとりの判断速度を上げる,という明確な意図があることを感じさせます。となれば,「予備動作」が相当大事だろうことも見えてくる。どれだけ周囲を見渡せているのか,ということですよね。ボールをホールドしてから周囲の状況を判断するのではなく,パス・レシーブの段階からその先を予測しながら周囲を見ておく。その重要性を徹底しておく,という意図が見えますよね。


 となると,誰しも最終的なチームの目標は,現代的な“トータル・フットボール”かな,と考える。思考が自然と誘導されると言って良い。ですが,スポーツ・メディアや映像メディアを見る限り,「どう崩すのか」という部分については意識させていないように見えます。
 つまり,“ボール・ポゼッションを背景にパス・ワークで相手を崩せ”とか,“シンプルにロングレンジ・パスをFWに当てながら,周囲が飛び出して守備ブロックの網を破れ”など,具体的な指示は出ていないようなのです。要するに,トータル・フットボールのようなものであれ,キック・アンド・ラッシュであれ相手に応じて,変幻自在に攻撃スタイルをも変えて良い。フィニッシュへの可能性が高まるならば,自由に使い分ける,ということを本当は意図しているのではないか。


 だけど,中東遠征を見ていると,メディアやその報道を受け取るワタシたちのように,実際にピッチで戦っている選手たちもボールを積極的に動かしながら相手を崩す,というスタイルに必要以上にこだわってしまったのではないでしょうか。


 確かに,練習から導き出せるイメージとしては,そうかも知れません。


 ですけど,トレーニング・メニューが本当に狙っているものとは何だろう?と考えていくと,期待される答えは違ってくるような気がします。
 相手が,必ずしもポゼッションを基盤とするフットボールに対して脅威を感じているわけではなく,実際に守備ブロックを効果的に揺さぶることができていたわけでもない。さらに言えば,自分たちのコンディションや,天候などのコンディションもポゼッション・ベースのフットボールを展開するには不利だった。
 つまり,今回の対戦相手(サウジアラビア,そしてイエメン戦では後半途中まで)に対して,不正解に近い解答(攻撃スタイル)をピッチで表現してしまったことにもなるのかな,と思うわけです。


 「柔軟性」や「適応性」をメイン・テーマとして掲げているだろうチームにあって,あまりに硬直した戦い方にこそ,最大の不満点があったに違いありません。


 フィニッシュから逆算して,どういう攻撃の組み立てが相手守備ブロックにとって嫌なものか,という戦術面でのインテリジェンスがひとりひとりに求められることになる。そして,そのインテリジェンスを実際にピッチに表現するためには,ひとりひとりに柔軟性が求められることになる。
 確かに,目標としているだろうフットボールとは言えないだろうけれど,そもそも常に目標としているフットボール,そのスタイルがいつも押し切れるのか,と言えば疑問が残ります。そんなときに,積極的に掟破りのように相手の嫌がるフットボールを展開できるような,“自由な”フットボーラーを待っているに違いないな,と。


 表面的に見てしまうと,「クセモノ」扱いされるかも知れないけれど,実際には誰よりもシッカリと周囲を観察し,チームが相手に対して効果的な攻撃を仕掛けていくための,きっかけを作り出す。そういうプレイヤーこそ重要なピースではなかろうか,と思うわけです。