対イエメン戦(アジアカップ予選・アウェイ)。

やっぱり,重要視していたのは第1戦であるサウジ戦よりも,イエメン戦だったのかな,と感じたりします。


 とまあ,いつものように書いていきますと。


 もちろん,基盤として構築していくつもりだろう,“ムービング・フットボール”を徹底的に押し切ろうという意識は感じられたけれど,同時に「勝ち点3」を奪取するためのリアリスティックなフットボールにも,チームとしての意識を振り向けていたような感じがします。


 確かに熟成初期の段階にあるチームで,優先課題は自分たちのフットボール,その方法論を実戦という舞台で浸透させていくことでしょう。ですけど,予選リーグの位置関係を冷静に見れば,「眼下の敵」であるイエメンを確実に沈めることはさらに高い優先順位に位置付けられるはず。こう考えれば,ゲーム終了をにらむ時間帯にシンプルな縦方向へのフットボールを展開したことは,決しておかしくはないです。
 むしろ,ベンチ・ワークによって誘導されずとも,自然にパワー・プレー方向へとシフトチェンジしていっても良いくらいです。


 “インテリジェンス”は単純にパス・ワークやオフ・ザ・ボールでの仕掛け方,そして戦術理解度だけに当てはまることではなく,パワー・プレーなどラッシュを仕掛ける時間帯なのか,それとも自分たちが意図するフットボールを押し切るべき時間帯なのかを自律的に,かつ冷静に判断するという「戦術眼」の部分でも当てはまるはずです。
 相手の仕掛け方に応じて守備ブロックを柔軟に変化させる,というのが基本的なアイディアならば,相手の守備ブロックがどのような網を仕掛けているかなどの状況によって,攻撃スタイルを柔軟に変化させていっても良い。
 たとえば,攻撃ユニットだけで局面が打開できないのならば,ディフェンシブ・ハーフや最終ラインに位置するプレイヤーが積極的に攻め上がることで,相手守備ブロックを撹乱していく。あるいは,攻撃イメージそのものを変化させ,縦方向にシンプルな組み立てを意識する。パス・ワークで相手に揺さぶりを掛けるのと,縦方向にシンプルに攻撃を仕掛けるアプローチのどちらがゴールから逆算してより効果的なのか(相手守備ブロックを突き崩す可能性が高いのか),ということを“チームとして”意識し,スムーズに切り替えられるようになることが,最も重要な要素なのではないか。


 熟成初期段階ではあるけれど,その先を意識するために重要な要素である,“adaptability”(エリサルドさんみたいでナンですけど),その一端のようなものを感じられた。


 ・・・予選を突破するために,さらなる優位を構築しておくことができた(で,実際には予選通過を決めた)ことを考えれば,課題を明確なものとすることとともに,しっかりとタスクを達成したと見ることもできるでしょうか。どういう目標を設定していたか,その部分に関して指揮官は明確なコメントを残してはいないけれど,少なくとも冷静にゲームの分析をしながら,チームの方向性を見定めていくつもりだろうな,とは感じます。


 “ファイナル・スコア”だけからではなかなか説明がつかないところに,いまのチームが引きずっているだろう課題や,将来に向けた可能性があった。そんな遠征だったのではないでしょうか。


 それにしても,であります。


 正直言えば,冷静になってみればごく当然のことを言っているに過ぎないようにも思えるのだけれど,表面的には難解でどうしようもない哲学書を読んでいるような感じがします。


 そうそう,最後にちょっとオマケではありますが。


 大熊さん,その才能を最大限に引き出すのならば,セルボ・クロアチア語,ちょっとかじっておいた方が良いと思いますですよ(ホントは,となりの通訳氏が前任の鈴木さんのように「分身」のごとく動けると良いんですけど)。