対新潟戦(06−19)。

積極評価すべき部分と,消極評価せざるを得ない部分とが同居してしまったゲーム,という感じがします。


 まず,積極評価すべき部分から。


 まずは,大きく言えば3−1というファイナル・スコアであり,勝ち点3を奪取したということでしょうか。
 簡単な相手など,どこにもない。中盤を抑え込む,あるいは全体をコンパクトに低く構えることで物理的なプレー・スペースを最小限にすることで,カウンター・フットボールを基本的なゲーム・プランに据えるチームは間違いなく多いはず。そういう相手に対して,しっかりと勝ち点3を奪取するゲームを展開できること。これ自体,ある意味では評価できることだと思うのです。
 ゲーム内容から具体的に考えれば,ピッチサイズを最大限に活用したボールの展開が(時間帯によるムラがありはするものの)できていることや,「縦」への意識が守備ブロックを含めたチーム全体へと浸透していることで,攻撃のバリエーションが広がりつつあることにあるか,と考えます。
 すでに闘莉王選手の攻撃参加はチームとしての大きな攻撃オプションですが,彼のサポートに入る啓太選手がタイミングを図りながらアウトサイドとポジション・チェンジを仕掛けながら積極的に前線へと顔を出す。あるいは坪井選手がボール奪取後,前方へとドリブルで持ち出すという形が出てきたことで,「スペースを突くことで,相手守備ブロックにクラックを生み出す」という攻撃に関する共通意識が高まっていく。この部分に関しては,間違いなくチームはポジティブなサイクルにあるな,と感じます。
 同点に追い付いた場面も,闘莉王選手が果敢にペナルティ・エリアで突破を図ったことがPKへと結び付いていますし,ゲームを決定付けた3点目のアシストも,同様にペナルティ・エリア右サイドを突破してきた闘莉王選手からの折り返しにワシントン選手が反応したものであります。“ハットトリック”という結果に目が向きがちになりますが,ゴールに結び付く形をどう作り出したか,という部分ではチームは決してブレていない。この点に関しては,ポジティブな見方をして良いものと思います。


 ただ,無条件にホメて終われるほどのグッド・ゲームだったとも言えないような気がします。ということで,消極評価せざるを得ない部分を。


 当然,コンディショニングに難しさを生じる夏場の連戦ということで,一定程度割り引いて考える必要があるのかな,とは思うのですが,それでもチームがコンパクトネスを失いやすい傾向が見える,というのはあまり良いことではない。
 今節においては,トランジションがスムーズさを欠いていることで,チームの連動性に問題を抱えている時間帯が多かった。相手ボール・ホルダーに対するプレッシングは比較的安定しているけれど,実際に相手からボールを奪取し,攻撃へと移るタイミングで,全体が連動して積極的に押し上げていく動きに微妙なズレを生じている。そのために,一時的にせよチーム全体が大きく引き延ばされたような時間帯が生じてしまう。特に相手がボール奪取位置を比較的自陣深い位置に設定していたためか,チームが押し上げるタイミングにラグを生じてしまうと,ハーフウェイ・ライン付近にエア・ポケットのようなスペースを作り出してしまうことになる。
 より具体的にカウンターを受ける場面を表現すれば,ボール・ホルダーが相手守備ブロックの網にかかると,本来チームのプライマリー・バランスの核となっているはずの中盤が相手を捕捉しきれない,というものになる。最終ラインだけが相手のカウンター・アタックを受け止めなければならない状況になると,守備バランスが不安定性を露呈することになる。今節チームが見せた不安定性,特に守備面における不安定性は,ポジショニング・バランスが最適とは言えない状態にあったこと(=相手ボール・ホルダーを早い段階で捕捉できない状況にあったこと)が,大きな原因であるような感じがします。
 相手の攻撃を最終的な局面で跳ね返せたことで,結果的には決定的な破綻にまでは至らなかったものの,相手が意図していたであろう中盤深めの位置からのカウンター・フットボールというゲーム・プランを表現させてしまったことは,課題として指摘すべきだろうと思うのです。


 ・・・中断期間の影響で,8月のリーグ・スケジュールは過密です。


 土曜日のナイト・マッチだけを週1回というペースであっても,トレーニング・スケジュールを考えれば,コンディショニングは難しいはずと想像します。にもかかわらず,週2回の開催ペースですから,チームに発生した問題の修正やコンディション調整は難しさを増すと感じます。
 この時期,決して充実した「内容」を求めるべきではないのかも知れないけれど,あとあとになってチームに悪影響をもたらすような課題はしっかりと修正しておかなければならない。「快勝」という部分だけに注目してはならない,重要な課題も同様に提示されたゲームだろうと感じています。