レイン・セット。

いつも路面状況が乾燥していれば,基本的に“オルタナティブ”を考える必要はないわけです。


 ですが,天候条件は選べません。


 快晴のケースもあれば,土砂降りのこともある。それでも,ポイント・スタンディングを考えれば,レイン・コンディションを捨ててかかるわけにはいかない。長いシーズンを戦うにあたって,不可抗力的なリタイアメントも確かにある。だが,「安定している」ことが,総合順位を争い,良い位置に付けていくためには最も重要な要素となる。


 となれば,レイン・セットは重要な要素になるはずです。


 ドライ・コンディションならば駆動力をしっかりと伝えられるとしても,雨に濡れた路面はグリップが落ちます。何よりも,タイアと路面のあいだに水膜が介在することによって生じる“ハイドロ・プレーン”は大きなネックとなる。降雨状況によって,どれだけの溝を刻んだタイアが最適か,選択が難しい。そして,路面温度がドライとは違う以上,コンパウンドのチョイスも異なってくる。また,立ち上がりをマイルドな特性にすることでパワーを確実に路面に伝えるために,サスペンション・セッティングをレイン・コンディションに合わせてセッティングしていく。


 状況に応じて,柔軟にセッティングを切り替え,変化する条件に対応していく。その目的は当然,「勝ちに行く」ことにあり,どんな条件であっても持っているポテンシャル,パフォーマンスを引き出すことにあります。


 ・・・いつものように,屋号に絡んだ例え話をしてみました。


 夏場の連戦であります。チームにとっては高負荷状態であります。


 ある意味,レース途中でレイン・コンディションに変わってしまったような感じもします。しますが,チームのパフォーマンスを引き出す,その道筋はひとつだけではないはずです。プライマリー・セットだけが正解なのではなく,状況に応じたセットが組めて,はじめて本来のパフォーマンスであったり,ポテンシャルが引き出される,と思うわけです。


 厳しい状況だからこそ,あらゆる側面での能力が試されている。そんな感じがしますし,気が早いかも知れませんが,2007シーズンに向けたテストとしても大きな意味を持つ。そう思います。